Web東京創元社マガジン

　2010年1月に、東京創元社キイ・ライブラリーより、リン・カーター著『クトゥルー神話全書』が発売になりますが、相前後して、この研究書の監訳をお願いしました朝松健さんの書き下ろした、クトゥルー神話もののオリジナル長編『弧の増殖――夜刀浦鬼譚』がエンターブレインより発売されます。

　この作品を、〈Webミステリーズ！〉をお読みの皆さんのなかから抽選で３名様にプレゼントいたします。

■内容紹介
千葉県夜刀浦市――古の因習の遺物たる巨石と最新技術をほこるメガ・サーバー施設を備えた電波塔が丘の上に鎮座するこの町には、様々な都市伝説が存在した。
電磁波が引き起こす神経症、頭のない幽霊の出現、死んだ殺人鬼の復活 etc.
メガ・サーバーが運転を始めたとき、これら全てが共鳴し町に阿鼻叫喚の一夜が訪れた!!
ケータイに届く謎の数字、悲鳴にも聞こえるノイズ、電波を媒介とした戦慄のクトゥルー譚ここに開幕!!

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【プレゼント応募要項】

　ご希望のかたは、下の応募フォームよりお申し込みください。プレゼント選択のラジオボタンで『弧の増殖』を選択してチェックしてください。当選発表は、作品の発送をもって代えさせていただきます。

 

■お申し込み締切　2011年1月31日（日）

お申込み登録には株式会社パイプドビッツのシステム「スパイラル」を利用しており、送信されたデータは暗号化された通信（SSL）で保護されます。


海外ホラー小説の月刊Webマガジン｜Webミステリーズ！　東京創元社

　去る2010年12月19日（日）に、新宿で〈キャプテンフューチャーコン2010〉が開催されました。その会のためにつくられ記念出版された文庫判ファンジン『フューチャーメン出動せよ！』を、抽選で３名様にプレゼントいたします。
　過去に書かれた、野田昌宏さんによる〈キャプテン・フューチャー〉に関連した記事を集成したもので、たいへん充実した内容の、後世に残る貴重な一冊と言えます。

　この作品を、〈Webミステリーズ！〉をお読みの皆さんのなかから抽選で３名様にプレゼントいたします。

　内容の詳細は、下記のとおりです。

■〈キャプテンフューチャーコン〉公式サイトの紹介ページはこちらです。

■『キャプテン・フューチャー　フューチャーメン出動せよ！』目次
【〈キャプテン・フューチャー〉シリーズ紹介・解説記事】 「ＳＦ英雄群像」　フューチャー・メン出動／ハヤカワＳＦシリーズ「太陽系七つの秘宝」／ハミルトンとキャプテン・フューチャー・シリーズ／ハヤカワＳＦシリーズ「時のロストワールド」／スペース・オペラの時代／「宇宙ＦＢＩ」まえがき／読者のみなさんへ／宇宙ＦＢＩ」について（解説）／「スペース・オペラ名作選〈�T〉太陽系無宿」／〈特別取材〉スペース・オペラの主人公達を訪ねて／「アニメージュ」　『キャプテン・フューチャー』について／日本で一番くわしい人の一番くわしい話。翻訳者・野田昌宏氏にインタビュー／「キャプテン・フューチャー�@恐怖の宇宙帝王」／《解説――『キャプテン・フューチャー』シリーズの出発》／「キャプテン・フューチャー�A時のロストワールド／謎の宇宙船強奪団」／《解説――四十年前の原作と現代》／「THE WORLD OF CAPTAIN FUTURE」　Message from Great Adomiral／「キャプテン・フューチャー・ハンドブック」／宇宙軍大元帥（野田昌宏）よりごあいさつ／イラストギャラリー／Let's Read Captain Future　さぁキャプテン・フューチャーを英語で読んでみよう／「透明惑星危機一髪！」創立50周年記念復刊　新装版への訳者あとがき／「ＮＨＫ人間大学　宇宙を空想してきた人々」第７回／ＳＦの“市民権”獲得へ　～スペース・オペラからのテーク・オフ～／「ＳＦを極めろ！ この50冊」　時のロスト・ワールド　The Lost World of Time／これぞスペース・オペラの極めつき！／〈C.F.Con 1990〉レポート

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【プレゼント応募要項】

　ご希望のかたは、下の応募フォームよりお申し込みください。プレゼント選択のラジオボタンで『フューチャーメン出動せよ！』を選択してチェックしてください。当選発表は、作品の発送をもって代えさせていただきます。

 

■お申し込み締切　2011年1月31日（日）

お申込み登録には株式会社パイプドビッツのシステム「スパイラル」を利用しており、送信されたデータは暗号化された通信（SSL）で保護されます。


海外SF小説の月刊Webマガジン｜Webミステリーズ！　東京創元社

　パルプマガジンの解説の類を読むと、ダイムノヴェルとパルプマガジンとは、中身においては、ほとんどひとつながりのように書かれています。ニック・カーターのように、メディアは変わっても、のちのちまで残ったヒーローもいました。このふたつの大きな違いは、まず一番に、流通経路（行商と新聞スタンド）が指摘され、次に、パルプマガジンは専門誌化が進んだことがあげられます。パルプマガジンの隆盛は、1912年にエドガー・ライス・バローズが出たことが、ひとつのエポックとなったようです。火星シリーズやターザンの作家ですね。そして、おおよそ第一次大戦を境に専門誌化がすすみます。ここはパルプマガジンの全貌を見るところではないので、その専門誌化のひとつにミステリがあったと書くにとどめますが、パルプマガジンが花開く1920年代のディテクションの小説は、シャーロック・ホームズ（と、そのライヴァルたち）が、とりあえずのお手本でした。多くはイギリスの小説です。正確には、お手本というより、安易な再生産という方が正しいのかもしれません。ウィリアム・Ｆ・ノーランの「あるパルプ雑誌の歴史」（『ブラック・マスクの世界　別巻』所収）には、最初期のブラック・マスクに載った、退屈なミステリの実例が引用されています。アメリカには読むべきミステリがないと考えたヴァン・ダインが、ミステリに手を染めるのは、その直後でした。
　トニー・グッドストーンの「パルプ・マガジンの時代」に出てくる作品を読むと、まず、その拙さに驚きます。ウィリアム・Ｐ・マッギヴァーンの「上海の恐怖」は46年の作品ですが、上海を舞台にした絵に描いたような通俗ハードボイルド――それも書き飛ばしたそれ――です。そもそも原題がManchu Terrorですからね。いい加減なものです。とても５年後に『殺人のためのバッジ』を書く人とは思えない。過去のお蔵入り作品がなんらかの事情で復活したものでもありえません。戦後の上海の話なのです。これ以外にも、有名どころ（ブラッドベリやハメット、そしてテネシー・ウィリアムズ！）も含めて、なんの曲もない、そのジャンルのパターンをなぞった作品が並んでいました。企画として不発だったのも仕方がありません。
　それでも、なにがしか読んで得るところはありました。たとえば、比較的面白かったのがポール・ギャリコのボクシング小説「臆病者マイク」です。才能のある、しかし対照的なふたりの兄弟ボクサーの話は、小説というよりも、無名のボクサーを描いたスポーツノンフィクションのような書きぶりなのです。あるいは〈航空＆戦争〉と分類された、ジョージ・ブルースの「撃墜王エイヴァリー」の冒頭は、飛行機マニアの細かい興味を満たすよう書かれているのが一目瞭然です。そうしたことに気づくとき、パルプマガジンは、どこかに実話のしっぽを残したものであることを悟るのです。したがって、そこで描かれる犯罪は実際のものを覗き見るようなものでなければなりません。そして、そのことは、絵空事のファンタジーやＳＦにも、実はあてはまるのではないでしょうか。バローズの「ジンバー・ジョウの復活」は古代人の復活という絵空事ですが、偶然、そこに立ち会った当事者の怪奇な体験という枠組みを持っていました。そもそも、ヒューゴー・ガーンズバックがアメージングストーリイズを創刊するに到ったのは、現実の（あるいは近い未来に現実になる）科学を啓蒙するためでした。

　パルプマガジンは俗悪な雑誌であり、その終焉に到るまでの期間、まともな評価はないようです。ブラック・マスクの名編集者ジョゼフ・Ｔ・ショーもパルプという言葉が嫌いだったと、ノーランの文章にはあります。そういう意味では、差別された雑誌群であり、ボーモントの「血まみれのパルプ・マガジン」は、そんな雑誌に対する、懐古的なラヴレターの趣さえあります。プレイボーイの62年9月号に、シリーズ〈ノスタルジア〉のひとつとして載ったものだそうですが、この当時で、パルプマガジンのファンだったことをおおっぴらにするのに、どれほどの抵抗があったかまでは、私も分かりません。
　ボーモントは、パルプマガジンの「大半は良書の部類に入っている」と書きますが、それは贔屓の引き倒しとしても、煽情的な表紙絵に比べて、多くのパルプマガジンの内容はおとなしかったようです。ただし、それを自主規制と見るかどうかは、分からない部分があって、先ほどの亀井俊介の、品よく清潔は売れるという指摘を、もう一度思い出してください。なによりも商売が優先するアメリカにあっては、あらゆる妥協は当然のことです。『サーカスが来た！』の「ハリウッド、ハリウッド」の章では、20年代のハリウッドが宗教団体、道徳団体の圧力を受けて、自己規制のために「長老派教会の長老であるウィル・Ｈ・ヘイズを、年棒10万ドルの高給で招いて会長とした」とあります。ポップカルチュアは、なによりも大衆の評判で動き、圧力団体の大声はそこに働くのです。
　ハメットをブラック・マスクの中心と定めたジョゼフ・Ｔ・ショーは、ハードボイルドミステリの作家たちが「登場人物たちにことさら荒々しい行動をさせたり、話しかたをさせたりしたのではなく、そういうふうにするのを許したのである」と「『ブラック・マスク』のスタイル」に書いています（『ブラック・マスクの世界　別巻』所収）。ピューリタンが眉をひそめ、見ずにすませている現実の通りに、登場人物たちがふるまうことを許したということなのでしょう。確かに、それは、アメリカのリアルな犯罪を捉えたものだったでしょう。しかし、一方で「作品に明快さ、もっともらしさ、真実性を持たせるためには、単純さが必要だった。動きの早さもほしかった」と書いています。単純さが必要という考えは、ハメットなどの一部の天才を除けば、複雑なことを描いては読者に訴求しえないことの告白と、私には思えてなりません。事実、トニー・グッドストーンの「パルプ・マガジンの時代」の短編は、ハメットの「一時間」も含めて、単純な話ばかりでした。
　亀井俊介は、ターザンの原作のうち、映画において、どこが損なわれていったかを、細かく分析していますが、その過程は、アメリカの大衆が望む神話が成立する過程を見る思いがします。神話は必ずしも現実ではありません。事実ではないから齟齬が見つかり、それは嘘だと声があがるのです。そのようにしてジャーナリズムは進歩しましたし、ハードボイルドは必ずしも現実ではなかった（だから悪いとは、必ずしも思いませんが）ために、ジェイムズ・エルロイは、それは違うと言い続けることになりました。
　では、ブラック・マスクという雑誌は、あるいは、もっと広く、パルプマガジンは、大衆を無視できないという限界に阻まれていたのでしょうか？　その小説群のなにが現実で、なにが神話だったのでしょうか？　パルプマガジンの中から黄金を探り当てることは、同時に、そうした疑問の答えを考えることにもなりそうです。

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■小森収（こもり・おさむ）
1958年福岡県生まれ。大阪大学人間科学部卒業。編集者、評論家、小説家。著書に 『はじめて話すけど…』 『終の棲家は海に臨んで』『小劇場が燃えていた』、編書に『ミステリよりおもしろいベスト・ミステリ論18』 『都筑道夫 ポケミス全解説』等がある。


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