海外ミステリ出張室

2016.09.05

翻訳ミステリについて思うところを語ってみた・その13 創元推理文庫の背表紙はカラフルなのだ

みなさまこんにちは。あっという間に9月になってしまいました。夏休みは楽しい読書タイムを過ごせましたでしょうか?

さて、今回は創元推理文庫の背表紙についてのお話です。先日、新しく刊行する文庫の編集作業中に「この本の背色はピンクがいいかな、青がいいかな?」と悩んでしまいました。そこでふと、文庫の「背色」ってこの連載のネタになるかもなと思いついた次第です。

背表紙の色のことは「背色」と呼んでいます。「せいろ」と読みます。下の写真を見てもらえればわかるかと思いますが、創元推理文庫の背表紙はわりとカラフルになっているのです。背色については、2014年に創業60周年を迎えたときに、創立60周年フェア用小冊子の「東京創元社のひみつ」というミニコラムで紹介しておりました。その際にTwitterでも背色についてつぶやいたのですが、リツイート数がけっこう多くて案外ご存じない方がいらっしゃったのだなぁ、と驚きました。そして今回、あらためてご説明したいと思います!

seiro.jpg
背表紙の色にはそれぞれこんな意味があります。

*ピンク→女性作家
*茶色→英国作家
*緑色→本格ミステリ、ユーモアなど
*青色→警察小説、ハードボイルド、冒険小説など
*黄色→日本人作家のミステリ
*灰色→ファンタジイ、ホラー
*藤色→創元SF文庫

「イギリスの女性作家が書いた警察小説」など複数の条件を満たす場合は、そのなかのいずれかの色になります。背表紙をどの色にするかは、基本的に担当編集者が決めています。といっても、日本の作家さんの文庫やファンタジイ、ホラー、SFは問答無用でそれぞれの色になるので、どの色にしようか悩むことがあるのは、翻訳ミステリの担当者だけになります。

ではなぜ翻訳ミステリだけ、ピンク、茶色、青色、緑色と細かく分かれているのか? これは創元推理文庫が創立以来、独自のマークを利用した「ジャンル分類」を行っていた伝統を引き継いでいます。というわけで、ここで取り出しちゃいましょう、『東京創元社 文庫解説総目録』~! これさえあれば東京創元社の歴史がまるわかり!! 定価5400円ですがお買い得ですよ!!(宣伝)

さて、1959年4月の創刊時から、創元推理文庫は松田正久氏デザインのマークでジャンルを分類しておりました。1991年にマークは廃止になりましたが、その後もいろいろなフェアなどで使用しています。マークをかたどったピンバッジも作成しまして、過去に〈ミステリーズ!〉を定期購読していただいた方へプレゼントしておりました。

(※マークの図版)
この「マーク」の分類は以下のとおりでした。

  • 01.gif*おじさんマーク(横顔マーク、はてなマーク)→本格推理小説
  • 02.gif*拳銃マーク→警察小説・ハードボイルド
  • 03.gif*猫マーク→サスペンス・スリラー
  • 04.gif*時計マーク→その他の推理小説・法廷・倒叙
  • 05.gif*帆船マーク→怪奇と冒険
  • 06.gif*SFマーク→SF
  • 07.gif*ユニコーン・マーク→ゲームブックス

はい、というわけで、なんとなく背色での分類と重なる感じなのがおわかりでしょうか。このマーク分類が廃止されてから色でのジャンル分けになったわけなのですが、新たに女性作家のピンクと英国作家の茶色が生まれました。何かしら時代の要請があったようです。

ピンクの背色にはジル・チャーチルやシャーロット・マクラウド、サラ・ウォーターズやミネット・ウォルターズなどの作家が名をつらねており、女性読者を中心に人気が高いです。とはいえ女性作家なら必ずピンクの背色にするわけではなかったりします。

◇クイズ:この中で背色がピンクではない女性作家は誰でしょう?

①いわずとしれた「英国ミステリの女王」アガサ・クリスティ
②「英国四大女流ミステリ作家」と称されたマージェリー・アリンガム
③「ドイツミステリの女王」ネレ・ノイハウス
④「女性初のアメリカ探偵作家クラブ会長」ヘレン・マクロイ


* * *


正解は③のネレ・ノイハウスでした~!!『深い疵』『白雪姫には死んでもらう』などの〈刑事オリヴァー&ピア・シリーズ〉は、警察小説なので背色は青です。別にピンクでもよかったのですが、警察小説であることを強く押し出すため、あえて青色を選びました。このように、いろいろ例外もあるので気になる人は探してみてください。なお、クイズで取り上げた他の作家はすべてピンクの背です。

この世には膨大な数の本が刊行されているので、このような区別が、読者さんそれぞれの好みに合った本を選ぶ手助けになればいいなと思います。本屋さんで創元推理文庫の棚の前に立ったときは、ぜひこの背色にも注目して、本を選んでみてください。

(東京創元社S)


(2016年9月5日)




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