海外ミステリ出張室

2016.03.07

翻訳ミステリについて思うところを語ってみた。その8・これが東京創元社 新刊ラインナップ説明会だ!


みなさまこんにちは。花粉症に苦しんでいる翻訳ミステリ班の編集者Sです。この時期はほんとーにつらくて、普段の3割り増しくらいにボケている気がします。

さて、今回は2月22日に都内某所で開催いたしました〈東京創元社 2016年新刊ラインナップ説明会〉について、翻訳ミステリ関係を中心に語ってみたいと思います。〈新刊ラインナップ説明会〉というのは、作家さんや翻訳者さんをゲストに迎え、その年に刊行予定の注目の新作をメディア関係者や書店員さん、そして一般の読者の皆さんにご紹介するというイベントです。実はすでに3年目で、新刊紹介のほかにも北村薫先生と深緑野分先生によるトークショー、ゲスト対抗「ビブリオバトル」など、目玉たっぷりでした。

〈新刊ラインナップ説明会〉では、翻訳ミステリ、国内ミステリ、ファンタジイ、SF、その他のジャンルの各担当編集者が目玉作品について話します。200人もの前で、「プレゼンテーション」なるものをしなければいけないんですよ! ふだん本作りの裏方作業に徹しているので、表舞台に立つのは苦手です。148cmの身長に比例して心臓も小さいので、壇上に立ったときはとっても緊張しました。

しかも、わたしが担当する翻訳ミステリのご紹介はトップバッターだったんです! 各書籍の担当編集者から集めた新作の情報をもとに発表原稿を書きました。これがまたリハーサル時にはダメだしの嵐でして……。もうほんと泣きそうになりながらお家でひとり練習を繰り返した2月下旬でした。無事に終わっていま、めちゃくちゃ晴れやかな気分です。

会場では編集者が口頭で本を紹介するのと同時に、正面の大きなモニターにパワーポイントで書影やキャッチコピーをうつしだしていました。会場で受付時にお配りした資料には詳しいあらすじ等の書誌情報を掲載したので、参加者の方は発表を聞きながら参照することができます。親切!

ここで、会場にいらっしゃらなかった方のために、翻訳ミステリの新作について簡単な内容をご紹介したいと思います! 口頭で発表した順です。

* * *

『ハデス』※仮題  キャンディス・フォックス/冨田ひろみ訳/創元推理文庫/6月刊行予定
海の底に沈んでいた箱の中の20人の死体!オーストラリア発、最悪の連続殺人に挑む刑事たちを描く破格の警察小説。

『ブラック・リバー』※仮題  サラ・M・ハルス/髙山祥子訳/創元推理文庫/9月刊行予定
白血病に侵された妻を献身的に支えてきた男が、過去と折り合いをつけるため妻の遺灰を抱えて「あの町」へ還る――。担当者が「ぜったい泣ける!」と断言した今年度最高の感動作。

『ウィアード』※仮題  キャシー・アンズワース/三角和代訳/創元推理文庫/5月刊行予定
探偵の調査が、ある少女が殺人者として裁かれた20年前の事件を甦らせる。「被害者捜し」の趣向が凝らされた英国発の傑作ミステリ。

『真実、その他の嘘』※仮題  ザーシャ・アランゴ/浅井晶子訳/創元推理文庫/6月刊行予定
ベストセラー作家の主人公が犯した犯罪とは。ドイツ発、どんでん返しだらけ、一瞬も油断できない長編ミステリ。

『ささやかで大きな嘘(上・下)』  リアーン・モリアーティ著/和爾桃子訳/創元推理文庫/4月刊行予定
名門幼稚園での保護者の不審死をきっかけに、複雑な人間関係が語られる。アメリカのamazonで一万を超えるレビューがついた驚異的なミステリ。

『泉』※仮題  キャサリン・チャンター/玉木亨訳/単行本
3年間雨が降らないイギリスで、唯一雨が降る農場。干魃にあえぐ世界を舞台にしたサスペンス&フーダニット!

『貴婦人として死す』  カーター・ディクスン/高沢治訳/創元推理文庫/発売中
老医師が語る村の大事件を、H・M卿が車椅子で暴走しつつ推理する。〈不可能犯罪の巨匠〉による、張りめぐらした伏線を見事回収する巧みな本格ミステリ。

* * *

上記の作品をご紹介したあと、「刑事ヴァランダー・シリーズ」でおなじみ、北欧ミステリの帝王ヘニング・マンケルのエッセイ集『流砂』について、翻訳家の柳沢由実子先生からお話していただきました。

『流砂』は、マンケル氏が癌の宣告を受け死を覚悟して書き残した、人間への、世界への愛や尽きせぬ思いに溢れた作品です。柳沢先生から作品の内容や、翻訳の進捗状況について語っていただきました。ゲストの作家さんや翻訳者さんから直接お話をうかがえる、というのがこの説明会の醍醐味なのです! 『流砂』の刊行は10月を予定しておりますので、どうぞお楽しみに。

『空飛ぶ馬』を初めとする「円紫さんと私シリーズ」で〈日常の謎〉の先駆けとなった北村薫先生と、戦場における〈日常の謎〉を連作形式で描いた『戦場のコックたち』の著者、深緑野分先生のトークショーもたいへんおもしろかったです。おふたりのお人柄が伝わってくる楽しいトークでした。北村先生の話し方がまるで本物の落語家さんみたいで、すてきでした。深緑先生のお話も、その一風変わったペンネームの由来が語られたり、『戦場のコックたち』の参考文献についてなど、おもしろい話題ばかりでした。

そしてそして、今年いきなり「やってみようぜ!」となったゲスト対抗の「ビブリオバトル」がすごかったです! ビブリオバトルとは、発表者がそれぞれ推薦したい本を持って集まり、5分間で紹介しあうコミュニケーションゲームです(詳しくは山本弘先生の「BISビブリオバトル部・シリーズ」を読んでくださいな。1巻目の『翼を持つ少女』が4月に文庫化ですぜ☆)。参戦されたのは北村薫先生、深緑野分先生、藤井太洋先生、山本弘先生、そして司会の池澤春菜さん。くじびきで決まった順番で5分間ずつ本を紹介されたのですが、あまりのスピーチのうまさに、わたしは自分のダメさ加減を思い出して涙目に……。紹介された本はどれもおもしろそうで、読みたくてたまらなくなりました! 「チャンプ本」に選ばれたのは深緑野分先生による『八月の暑さのなかで――ホラー短編集』(金原瑞人 編訳/岩波少年文庫)でした。おお、翻訳もの……! 興味をもたれた方はぜひ読んでみてください。

説明会終了後、ご参加くださった方にアンケートのお願いをいたしました。たくさんいただいたご意見のなかで印象的だったのが、「海外ものは情報に触れる機会がなかなかないので、こういうふうに紹介してもらえると読みたくなってくる」「資料のあらすじだけでは興味を引かれなかったが、話を聞いているうちにおもしろそうと思えた」でした。なんというあたたかいお言葉! もうほんと準備中はてんわやんわですし、今年は会場が大きくなったので人手が足りず、わたしは会場の照明の調整までやってドタバタだったんですが、やった甲斐があったというものです……!

たしかに国内作家さんの本にくらべて、翻訳小説の情報はなかなか気づかれにくいかもしれません。わたしがこうやってちまちま文章を書いているのも、すこしでも翻訳小説に触れるきっかけを増やしたいという理由ですし。今回の〈新刊ラインナップ説明会〉のように、作品情報や「おもしろい本だから読んでー!」という気持ちをアピールしていくことが大事なのかなと思いました。あとは「ビブリオバトル」で学んだように、本の紹介をもっとうまくできるように頑張らねば!

なんとアンケートの回答者全員から「来年もまた参加したい」というご意見をいただけまして、とってもうれしかったです。全員ってすごいな100%だよ! 今回参加された方がTwitterでつぶやいてくださった感想をこちらにまとめていますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。来年もおそらく開催すると思いますので、「行ってみたいな~」と思われた方はぜひよろしくお願いいたします。 

(東京創元社S)


(2016年3月7日)




【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

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