新年あけましておめでとうございます。

毎年恒例となっております、元旦の特別企画! 2017年に刊行される予定の翻訳ミステリとその周辺作品のラインナップをご案内いたします。今年も一年間、選りすぐった良質の作品をご紹介してまいります。

年間最大級の驚愕を与える本邦初紹介作、感動必至の美しい物語、大物作家の堂々たる最新作、ハラハラさせたりほっこりさせたりする新シリーズなど、各種さまざまな作品を刊行していく予定です。さらに、ここには載せていない、さらなる隠し球が用意されているとかいないとか……どうぞお楽しみに!

本年もご愛読のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

(日本語タイトルは一部を除き仮題です)

【強烈プッシュ作】
■ゴードン・マカルパイン/古賀弥生訳
『青鉛筆の女』※2月刊!
2014年に発見された貴重品箱。なかには三つのものが入っていた。1945年にウィリアム・ソーン名義で発表されたパルプ・スリラー『オーキッドと秘密工作員』。編集者からの手紙。そして、第二次大戦中に軍が支給した便箋――ところどころ泥や血で汚れている――に書かれた『改訂版』と題された原稿。反日感情が高まる米国で、作家デビューを望んだ日系青年と、担当編集者のあいだに何が起きたのか?  書籍、手紙、原稿で構成される傑作長編ミステリ! エドガー賞候補作。

Code Name Verity
■エリザベス・ウェイン/吉澤康子訳
Code Name Verity
第二次世界大戦中、ナチに囚われた若き女性スパイの手記。それには親友である女性飛行士の戦場の日々が小説のように綴られていた。彼女はなぜ手記を物語風に書いたのか? ――驚愕の真相に、あなたは必ず涙する!

■トーマス・ラープ(オーストリア)/酒寄進一訳
『静寂――ある人殺しの記録』
生まれつき聴覚が異常に発達していたカールは、雑音に苦しむことに気づいた両親によって赤ん坊のころから地下室で育てられる。9歳のとき、母親の入水がきっかけで、死という「静寂」こそが「救済」になると確信する……。オーストリアを代表するミステリ作家が、純粋で哀しく、とてつもなく奇妙な殺人者を描く。フォン・シーラッハのごとき研ぎ澄まされた傑作!
Still

■シェーン・クーン/見次郁子訳
The Asset
イスラエル仕込みの卓越した空港保安警備スキルを持つセキュリティコンサルタントのケネディ。世界各地を一年中飛び回る多忙な彼だが、ある日その飛び抜けた知識と能力に目をつけたCIAから対テロ対策チームへの誘いがかかる……。空港セキュリティーのスペシャリストVS.冷酷無比なテロリスト。標的は、世界中のあらゆる空港。

【巨匠たちの最新作】
The Asset
アーナルデュル・インドリダソン(アイスランド)/柳沢由実子訳
『湖の男』(単行本)
干上がった湖の湖底から、殺害されたらしい男の骸骨が発見された。冷戦時代のソ連のスパイの可能性が疑われたが、調べるうちに浮かび上がったのが、婚約者を残して失踪した農耕機械のセールスマンだった。残されたフィアンセは、いまだに男のことを待っていた。しかし、さらに男の身元を調べると、その男がアイスランドの住民台帳に載っていないことがわかる。『湿地』『緑衣の女』『声』に続く、北欧ミステリの巨匠のシリーズ第4弾!

湖の男
ケイト・モートン/青木純子訳
『水辺の館』(単行本)
ロンドン警視庁の女性刑事セイディは、謹慎処分中にコーンウォールの祖父の家の近くの館、レイクハウスで70年前に起き、迷宮入りしていた赤ん坊失踪事件に興味を持つ。その事件の起きた日には屋敷に滞在中だった童話作家の服毒死体も発見されていて、このふたつの事件につながりがあるのかどうかも不明のままだった。以来、館はうち捨てられ、ミステリ作家となった現在の屋敷の持ち主である、誘拐された子供の姉は刑事セイディの質問に答えて事件の背後にある複雑な人間関係を語りだす。親子の関係が中心的なテーマとなり、過去と現在を行き来する構成はますます完成度を上げ、最後まで読者を翻弄するケイト・モートンの真骨頂。時代を超えた傑作ミステリ。
水辺の館

【人気シリーズ最新刊】
キャロル・オコンネル/務台夏子訳
『ルート66』
完璧な美貌の天才ハッカー、ニューヨーク市警刑事キャシー・マロリー。彼女の家の居間に女の死体が一体。部屋の主は行方不明。自殺か、まさかマロリーが殺したのか。肝心のマロリーはどこにいったのか。相棒のライカーは彼女のあとを追う。マロリーが改造したフォルクスワーゲンを飛ばすのは〈ルート66〉、別名“マザー・ロード”。自分が生まれる前に書かれた古い手紙をたどる彼女の旅が、〈ルート66〉上で起きた奇怪な殺人事件と交差する。

楽園
■キャンディス・フォックス/冨田ひろみ訳
『楽園――シドニー州都警察殺人捜査課』
凶悪犯罪をきっかけに、名実ともに「相棒」となった刑事フランクとエデン。婦女暴行や殺人の噂もある男を捕らえる証拠を掴むため、エデンは自ら閉ざされた農場のコミュニティに潜入する。危険極まりない潜入捜査の行方は? 『邂逅』に続く第2弾!

ネレ・ノイハウス(ドイツ)/酒寄進一訳
『刑事オリヴァー&ピアシリーズ5』
単なる警備員の死の背景には風力発電をめぐる汚職が? 絶大な人気を博す「刑事オリヴァー&ピア」シリーズ最新作! 『白雪姫には死んでもらう』を超える難事件!

アリ・ブランドン/越智睦訳
『書店猫ハムレットの休日』
ダーラが経営するニューヨークの気難しい書店猫ハムレット。全米キャットショーに特別ゲストとして招かれてフロリダへいくことに。来場者に注目されるのにまんざらでもない様子のハムレットだったが、その身に一大事件が勃発! 書店を飛び出した書店猫が大活躍。大人気コージー・ミステリ!

約束
■ロバート・クレイス/高橋恭美子訳
『約束』
ロス市警警察犬隊スコット・ジェイムズ巡査と相棒の雌のシェパード、マギーは、逃亡中の殺人犯を捜索していた。マギーが発見した家の中には、容疑者らしい男が倒れており、さらに大量の爆発物が。同ころ、同じ住宅街で私立探偵のエルヴィス・コールは失踪した会社の同僚を探す女性の依頼を受けて調査をしていた。幾重にも重なる偽りの下に真実はあるのか。『容疑者』のスコット&マギー、固い絆で結ばれた相棒の物語。

エドワード・D・ホック/木村二郎訳
『怪盗ニック全仕事4』
価値のないもの専門の泥棒シリーズ文庫版全集第4弾は、彼のライバルとなる美貌の怪盗サンドラ・パリス初登場作「白の女王のメニューを盗め」を巻頭に、全15編を収録。15編のうち6編が本邦初訳、5編が雑誌に掲載されたきりだった短編なので、今回もたいへんお値打ちな一冊です(きっとニックは盗めません。たぶん)。

【新シリーズ登場!】
■タイラー・ディルツ/安達眞弓訳
『悪い夢さえ見なければ――ロングビーチ市警殺人課』※2月刊!
殺された教師は全身をナイフで切り刻まれ、なぜか左手首を持ち去られていた……。情に厚く、家族を失った痛みを抱えるダニーと格闘技に秀でた姐御肌のジェン。支え合い真実を追う男女刑事コンビを描く警察小説第一弾!

■シュテファン・スルペツキィ(オーストリア)/北川和代訳
『ウィーンの探偵1』
ウィーンの探偵〈レミング〉は、依頼がなくても捜査に乗り出す。ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞、映画化された大人気シリーズが上陸!

■レイ・ペリー/木下淳子訳
A Skeleton in the Family
シングルマザーのジョージアは、高校生の娘を連れて故郷に戻ってきた。地元の大学で臨時講師にはなれたものの、正採用までの道は前途多難だ。実家に同居している親友シドと再会し、ひょんなことから忍びこんだ家で、ひとりと一体は死体の発見者となってしまう。……「一体」? そう、シドは人間ではなく「骨」。世にも不思議な、歩いてしゃべるガイコツなのだ! いっぱい笑ってちょっと泣ける、ガイコツ探偵のミステリ・シリーズ第一弾。

セブン・シスターズ1
■ルシンダ・ライリー/高橋恭美子訳
『セブン・シスターズ1 マイアの物語』
休暇を過ごしていた翻訳家のマイアのもとに、養父が突然亡くなったとの知らせが届く。急ぎ帰ったジュネーブの美しい館には、五人の妹たちが世界各地からもどってきた。大金持ちの謎めいた養父は、それぞれに奇妙な遺言を遺していた。長女のマイア宛の手紙には裏に年号と名前の入った三角形のタイルが入っていた。マイアは遺言をヒントにリオ・デ・ジャネイロに飛ぶ。世界的超ベストセラー作家が放つ現代版プレアデス姉妹の物語。

【非英語圏の俊英たち】
■シャルロッテ・リンク(ドイツ)/浅井晶子訳
『失踪者』※1月刊!
発表する作品がことごとくベストセラーとなる、ドイツを代表する国民的作家シャルロッテ・リンクの代表作。五年前に霧のロンドンで失踪した若い娘は殺されたのか? それとも自発的に姿を消したのか? 彼女と最後に接触した弁護士の男は、疑いをかけられ、人生を狂わされていた。はたして、五年前、何があったのか? 圧倒的な筆力に、読者は最終ページまで、引きずり込まれるように読まされること請け合いです。ドイツ本国で210万部超のベストセラー。

■ティモ・サンドベリ(フィンランド)/古市真由美訳
『処刑の丘』(単行本)※2月刊!
深夜、かつて虐殺の舞台になったことで〈黒が丘〉と呼ばれる場所で、男たちが処刑と称し青年を銃殺した。死体発見の報を受けた警察は、禁止されている酒の取り引きに絡む殺人として処理したが、ひとりの巡査だけは納得していなかった。事件の陰に見え隠れする内戦の傷、敗北した人々の鬱屈。国が真っ二つに引き裂かれた内戦は、この町にも爪痕を残していた。推理の糸口賞受賞。フィンランドの知られざる暗部を描いた注目のミステリ。

ジャック・ルーボー(フランス)/高橋啓訳
『誘拐されたオルタンス』
あの『麗しのオルタンス』の第二作がついに登場。どうぞお楽しみに……。猫のアレクサンドル・ウラディミロヴィッチも健在です!

Racheherbst
アンドレアス・グルーバー(オーストリア)/酒寄進一訳
Racheherbst
全身の骨が折られ、血が抜かれた若い女性の遺体が、ライプツィヒの貯水池で見つかった。娘の遺体を確認した母ミカエラは、犯人を捜し出し、姉と共に家出したままの妹娘を探し出そうとする。事件を担当する上級警部ヴァルターは、暴走するミカエラに手を焼きつつ調べを進める。一方ウィーンの弁護士エヴァリーンは、女性殺害の嫌疑をかけられた医師の弁護依頼を受けていた。『夏を殺す少女』続編。ドイツで爆発的な人気を博した話題作。

M・ヨートH・ローセンフェルト(スウェーデン)/ヘレンハルメ美穂訳
『犯罪心理捜査官セバスチャン3』
トレッキング中の女性が偶然見つけたのは、山中に埋められた六人の遺体。ずいぶん前に埋められたらしく白骨化していたが、頭蓋骨には弾痕が。早速トルケル率いる殺人捜査特別班に捜査要請が出された。トルケルは迷った挙げ句、有能だがトラブルメーカーのセバスチャンにも声をかける。家に居座ってしまったストーカー女にうんざりしていたセバスチャンは、渡りに舟とばかりに発見現場に同行する。史上最強の迷惑男セバスチャン再び。

■トーヴェ・アルステルダール(スウェーデン)/久山葉子訳
『海岸の女たち』
「あなたは父親になるのよ――」取材中に行方を発ったジャーナリストの夫にそれを伝えるため、ニューヨークからパリヘ渡った妻。舞台関係者で、人探しなど一度もしたことがない彼女が遭遇する、ヨーロッパに広がる底知れぬ闇。スウェーデン発、一気読み必至の大傑作長編。

フレッド・ヴァルガス(フランス)/田中千春訳
『ポセイドンの爪痕』
30年前にアダムスベルク警視の兄が容疑者のひとりとなった、ポセイドンと呼ばれる殺人鬼による連続殺人事件。今、ふたたび、ポセイドン事件と同じ手口で殺害されたと思われる女性の死体が発見された! 三つの刺し傷のある死体が……。殺人鬼ポセイドンがよみがえったのか? フランス・ミステリの女王ヴァルガスの傑作。『青チョークの男』『裏返しの男』のアダムスベルク警視シリーズ最新刊、CWA賞受賞作!

【古典発掘・名作新訳版】
G・K・チェスタトン/中村保男訳
〈ブラウン神父〉シリーズ【新版】※1月刊行開始!
完全無欠の必読の短編集が、新しいカバーと読みやすい版になってリニューアル! 第1弾『ブラウン神父の童心』、「青い十字架」「奇妙な足音」「折れた剣」など、綺羅星のごとき名作が詰まっています。既読の方もこの機会に読み直されてみませんか?

ダフネ・デュ・モーリア/務台夏子訳
『人形 デュ・モーリア傑作集』※1月刊!
島から一歩も出ることなく、判で押したような平穏な毎日を送る人々を突然襲った狂乱の嵐「東風」。海辺で発見された謎の手記に記された、異常な愛の物語「人形」。独善的で被害妄想の女の半生を独白形式で綴る「笠貝」など、短編14編を収録。平凡な人々の心に潜む狂気を白日の下にさらし、人間の秘めた暗部を情け容赦なく目の前に突きつける。『レベッカ』『鳥』で知られるサスペンスの名手、デュ・モーリアの幻の初期短編傑作集。

アーサー・コナン・ドイル/深町眞理子訳
『シャーロック・ホームズの事件簿【新版】』
1887年、『緋色の研究』で颯爽と登場し、たちまち名探偵の代名詞として奉られるほどの人気を博したシャーロック・ホームズは、4長編56短編で全世界のファンを魅了し、いま鮮やかに退場する。「読者諸君、今度こそほんとうにシャーロック・ホームズともお別れだ!」深町版ホームズ全集、ここに完結。

エラリー・クイーン/中村有希訳
『アメリカ銃の謎【新訳版】』
二万人もの大観衆が見守るコロシアムでの演技中、著名なロデオスターは銃殺された。現場にあった多すぎる銃の中に凶器はなく、おびただしい目撃者の中に犯人を見た者はいない。文字どおりの劇場型犯罪に挑戦する名探偵エラリーの推理やいかに。国名シリーズ第6弾!

ヘレン・マクロイ/駒月雅子訳
The Man in the Moonlight
ニューヨークの大学へ聞きこみに来たフォイル警視正が敷地内で拾った謎の紙片。それは大学関係者を巻きこむ連続殺人の開幕を告げるものだった。ウィリング博士シリーズ第2作は、のちに妻となるギセラとの出会いの物語でもある。『逃げる幻』『ささやく真実』と2作連続ランキング1位に輝いたマクロイの、端正な本格ミステリ。

【必読ノンフィクション】
■V・ディマイオ、ロン・フランセル/満園真木訳
『モルグ――死体が語る真実』(単行本)
全米を騒がせた黒人少年の射殺事件は果たして人種差別に基づく殺人だったのか、生後七か月の赤ん坊の急死から明らかになった恐るべき連続殺人、リー・ハーヴェイ・オズワルドとして埋められた死体は本当にオズワルド本人だったのか、有名音楽プロデューサーのフィル・スペクターによる女優銃殺事件をめぐる疑念、3人のティーンエイジャーによる悪魔崇拝殺人の真相とは……45年の経験を誇る、全米一著名な法医学者が明かす驚くべき検死と法医学の世界。傑作ノンフィクション。

【待望の文庫化】
■ロビン・スローン/島村浩子訳
『ペナンブラ氏の24時間書店』
失業中の青年クレイが再就職したのは、閑古鳥が鳴いているのに24時間営業で、店のあちこちに暗号で書かれた本が並んでいる(そしてそれを借りていく謎の人々がいる)、とにかく不思議な書店だった。友人やコンピューターの力も借り、こっそり本の暗号解読に挑むクレイ。それは、500年越しの謎をめぐる冒険の始まりだった。全米図書館協会アレックス賞受賞作にして、全国大学ビブリオバトル・グランドチャンプ本、待望の文庫化。

ケイト・モートン/青木純子訳
『忘れられた花園』
1913年オーストラリアの港にひとり取り残されていた少女。名前もわからない少女をある夫婦がネルと名付けて育て上げる。そして2005年、祖母ネルを看取った孫娘カサンドラは、祖母が英国、コーンウォールにコテージを遺してくれたという思いも寄らぬ事実を知らされる。なぜそのコテージはカサンドラに遺されたのか? ネルとはいったい誰だったのか? 茨の迷路の先に封印された花園のあるコテージに隠された秘密とは? 第3回翻訳ミステリー大賞受賞、第3回AXNミステリー「闘うベストテン」第1位の傑作、ついに文庫化!


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(2017年1月1日)


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