新年あけましておめでとうございます。
毎年恒例となっております、元旦の特別企画! 2016年に刊行される予定の翻訳ミステリとその周辺作品のラインナップをご案内いたします。今年も1月のヘニング・マンケル〈刑事ヴァランダー〉シリーズ最新作をトップバッターに、良質の作品をご紹介してまいります。

大型警察小説の1作目や、おなじみ人気コージー・ミステリの新作、古典名作の新訳・新装版までずらっと取りそろえておりますので、「ふむふむ、今年はこんな本が出るのか」とわくわくしながら読んでいただけますと幸いです。ここでご紹介しているもの以外にも、真の隠し球的な作品があるかも……(ニヤリ)。どうぞお楽しみに!

本年もご愛読のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

(日本語タイトルは一部を除き仮題です)

【巨匠たちの最新作】
ヘニング・マンケル/柳沢由実子訳
『霜の降りる前に』※1月刊!
リンダ・ヴァランダー、まもなく三十歳。警察学校を修了してイースタ署に赴任することが決まり、この夏は父クルトのアパートに同居している。久しぶりの故郷で、旧友との付き合いも復活。だが、その友人のひとりアンナが行方不明に。アンナになにが? 心配のあまり、まだ警察官になっていないからと諫める父の制止を無視して、勝手に調べ始めるリンダ。スウェーデンミステリの巨匠マンケルの人気シリーズ最新刊。

ウンベルト・エーコ/橋本勝雄訳
エーコ
『プラハの墓地』
ナチのホロコーストを招いたと言われている、現在では「偽書」とされる『シオン賢者の議定書』。ヒトラーは『わが闘争』中でもこの『議定書』についてふれている。この文書をめぐる、文書偽造家シモーネ・シモニーニの回想録の形をとった本作は、彼以外の登場人物のほとんどが実在の人物。祖父ゆずりのユダヤ人嫌いが、シモニーニの偽書作りの技によって具現化し、世界の歴史をつくりあげてゆくそのおぞましさに、現代の差別、レイシスムの状況について思いをめぐらさざるをえない。19世紀ヨーロッパを舞台に繰り広げられるエンターテインメント性の陰に、人間の恐ろしさを見事に描き上げた傑作悪漢(ピカレスク)小説。

サラ・ウォーターズ/中村有希訳
『黄昏の彼女たち』※1月刊!
1922年、ロンドン近郊。戦争とその後の混乱で兄弟と父を喪い、広い屋敷に母とふたりで暮らすフランシスは生計のため下宿人を置くことにする。募集に応じたのはレナードとリリアンのバーバー夫妻だった。ふとしたきっかけから、フランシスは自分よりも年下のリリアンとの交流を深めていくのだが……。心理の綾を丹念に描いて読む者を陶酔させる、ウォーターズの最新傑作ミステリ。

【強烈プッシュ作】
ハルス
■サラ・ハルス/高山祥子訳
『ブラック・リバー』
妻の遺灰を抱え、男はあの町へ帰る――。六十を過ぎ、ふたたび過去と向き合わざるを得なくなった男の姿が、静かな感動を呼ぶミステリ。

■エリザベス・ウェイン/吉澤康子訳
Code Name Verity
第二次世界大戦下のイギリス。ユダヤ人の飛行士マディと、スコットランド貴族出身のスパイ、クイーニー。出自も身分も違う少女ふたりは親友になり、共にフランスへ飛ぶことになった。だが身分証が入れ替わり、クイーニーがゲシュタポに捕まってしまう……。MWA賞ほか4冠の傑作!

アンズワース
■キャシー・アンズワース/三角和代訳
『ワードー 魔女のいた季節』
1984年、16歳のコリーンは殺人容疑で逮捕され、施設に収容された。それから20年。科学の進歩が発見した新たな証拠をもとに再審を求める勅撰弁護士から依頼された私立探偵が、当時の関係者に話を聞くため、事件の舞台となった港町を訪れる。交互に語られる現在と過去。しだいに明らかになる事件の全貌。そう、あのとき彼女が《殺した》人物の名は……。「被害者捜し」の趣向を持つ、青春ミステリと私立探偵小説のハイブリッド。英国ミステリの新たなる傑作がここに誕生。

フォックス
■キャンディス・フォックス/冨田ひろみ訳
Hades
海の底に沈んでいた箱の中には20人分の死体が。シドニー史上最悪の死体遺棄事件に挑むのは、コンビを組んだばかりの男女の刑事。オーストラリア推理作家協会最優秀新人賞受賞、破格の警察小説登場!

■ブラッドフォード・モロー/谷泰子訳
『古書贋作師』
希少本や著名作家の直筆書簡が取引されるマーケットを舞台とした、異色のミステリ。

アランゴ
■サッシャ・アランゴ/浅井晶子訳
『真実と嘘、その他の嘘』
一瞬たりとも油断できない、どんでん返し連発の傑作ミステリ!

■ローリー・キング/山田久美子訳
The Bones of Paris
パリで連続女性失踪事件が発生。グラン・ギニョール劇場、600万人が眠るパリの地下納骨堂を舞台に、『シャーロック・ホームズの愛弟子』シリーズで名高いMWA受賞のベテラン作家が放つ魅惑のミステリ!

モリアーティ
■リアーン・モリアーティ/和爾桃子訳
『ささやかで大きな嘘』
美しいビーチのそばに建つ名門幼稚園。いつもなら子供たちの楽しい笑い声が響く校内も、その夜は大人たちの怒声が飛び交い、救急車のサイレンまで聞こえてきた。保護者懇親会で、父母のひとりが亡くなったらしい。事故? それとも殺人!? しかも、この痛ましい事件は、6カ月前の新入園児オリエンテーションで起こった、ひとりの少女へのいじめが発端だというのだが……。軽快なタッチで描かれる傑作ママ友ミステリ!

■キャサリン・チャンター/玉木亨訳
チャンター
The Well
監視つきで自宅に監禁されている「わたし」が語りはじめた、ある殺人事件。異常な干魃が続く殺伐とした世界で展開されるサスペンス&フーダニット。

■ハビエル・マリアス/白川貴子訳
『執着』
マリア・ドルスという30代の女性編集者が、毎朝カフェで見かける仲睦まじい夫婦。理想のカップルとして彼女は憧れに似た気持ちを抱いていた。がある日、カップルは姿を消す。なぜ? なんと夫のほうが、ホームレスにメッタ刺しにされて死亡したというのだ。何か月か後、未亡人をカフェで見かけたマリアは、彼女に声をかけ、友人となる。夫妻も彼女に好意を抱いていたのだという。そして、夫の親友だったという男を紹介される。その男と、未亡人は特別な関係になっていく。そしてマリアも男に惹かれ関係をもつように……。そして、ある日、その男の部屋で朝を迎えたマリアは、彼と訪ねてきた客の男の驚くべき会話を耳にした! あの事件は通り魔殺人ではなかったのか? 三角関係の精算……? それとも嘱託殺人だったのか? 愛とは? 人間とは? ミステリ仕立ての「愛をめぐる考察」。

【人気シリーズ最新刊】
ライガ
バリー・ライガ/満園真木訳
『わが血の血』
ジャズが目を覚ますと、あいかわらずトランクルームのユニットに閉じこめられたまま。そばにはドッグとFBIの特別捜査官の死体。これでは自分が殺したと疑われてしまう。一方コニーは、ニューヨークに潜伏中のビリーの手に落ちてしまう。ジャズの、コニーの運命は? みにくいJとは? 〈カラスの王〉とは? ジャズはビリーの跡継ぎとなってしまうのか? そして驚愕の……。驚異の青春三部作ミステリついに完結!

ケイト・アトキンソン/青木純子訳
One Good Turn
『探偵ブロディの事件ファイル』に続く、娘思いで心配性なバツイチ探偵ジャクソン・ブロディのシリーズ第二弾。憧れのフランス暮らしを始めたブロディが、女優ジュリアがエディンバラ・フェスティヴァルに参加するというので出かけていって、事件に遭遇! またもや複雑な人間模様と、驚くべき犯罪の謎を解くことに……。ケイト・アトキンソンの人間ミステリ・ドラマはますます快調です。ジャクソン・ブロディって、ホントに魅力的ですよ。

オコンネル
キャロル・オコンネル/務台夏子訳
『ウィンター家の少女』
保釈中の殺人犯がウィンター邸で殺された。屋敷にいたのは七十歳の老婦人と、小柄な聖書マニアの姪だけ。どちらかが侵入者を殺したのか? 老婦人は五十八年前、この屋敷で九人の人間が殺された“ウィンター邸の大虐殺”以来行方不明になっていた女性だった。果たして当時十二歳だった彼女が事件の犯人だったのか? 今回の事件との関わりは? 迷宮のような事件に、完璧な美貌の天才ハッカー、ニューヨーク市警のマロリーが挑む。

E・J・コッパーマン/藤井美佐子訳
An Uninvited Ghost
降霊会の最中に殺人発生! 『海辺の幽霊ゲストハウス』に続く、明るく楽しいコージー・ミステリ第二弾。

ネレ・ノイハウス/酒寄進一訳
Mofdsfreunde
動物園で見つかった男性の死体。すぐそばの道路建設の環境破壊をめぐるトラブルが動機なのか? だが捜査が進むうち、被害者に関わるさまざまな問題が浮上してくる。謎また謎の展開と緻密極まりない伏線。『深い疵』の刑事オリヴァー&ピア、大人気シリーズ第2作!

エミリー・ブライトウェル/田辺千幸訳
The Ghost and Mrs. Jeffries
自宅で殺された裕福な女性は、死の直前に評判の霊能者がおこなう交霊会に出席していた。新年早々難事件にぶつかり弱気なウィザースプーン警部補を助け、ジェフリーズ夫人はじめ使用人たちがいつものように調査に乗り出す。〈家政婦は名探偵〉シリーズ最新作登場。

スーザン・イーリア・マクニール/圷香織訳
Mrs. Roosevelt's Confidente
《ニューヨーク・タイムズ》ベストセラー入り! マギー・ホープ、チャーチル首相に随行して生まれ育ったアメリカへ――。シリーズ第五弾。

ピーター・トレメイン/甲斐萬里江訳
『修道女フィデルマ短編集4』
法廷弁護士にして裁判官の資格をもつ美貌の修道女フィデルマが、もつれた事件の謎を痛快に解き明かす傑作シリーズ。今回は第二短編集Whisper of the Deadより5編を収録。

エドワード・D・ホック/木村二郎訳
『怪盗ニック全仕事3』
「価値のないもの」を専門に盗む泥棒ニック・ヴェルヴェットもの全作品を発表順に刊行するシリーズ第3弾。本邦初訳の4編をはじめ、雑誌に掲載されたのみだった作品など、ほとんどの人が「初めて読むであろうニックの短編」を多数収録した全14編。

アリ・ブランドン/越智睦訳
『書店猫ハムレットのお散歩』
最近元気がない、ニューヨークの書店マスコット猫のハムレット。愛想がないのはいつもどおりだけれど、どうも自分に自信をなくしているらしい……まさか!

【新シリーズ登場!】
アンドレアス・グルーバー/酒寄進一訳
『月の夜は暗く』※2月刊!
母が誘拐され殺された。遺体は大聖堂のパイプオルガンの脚にくくりつけられ、脇にはインクのバケツ。口にはホース、その先には漏斗が。処刑か、見立てか。容疑者にされた父の疑いを晴らすべく、ミュンヘン市警の捜査官ザビーネは腕利き変人分析官と犯人を追う。浮かんできのは、別々の都市で奇妙な殺され方をした女性たちの事件だった。『夏を殺す少女』の著者が童謡殺人に挑む。

【非英語圏の俊英たち】
フレッド・ヴァルガス(フランス)/田中千春訳
『ポセイドンの爪痕』
30年前にアダムスベルク警視の兄が容疑者のひとりとなった、ポセイドンと呼ばれる殺人鬼による連続殺人事件。今、ふたたび、ポセイドン事件と同じ手口で殺害されたと思われる女性の死体が発見された! 三つの刺し傷のある死体が……。殺人鬼ポセイドンがよみがえったのか? フランス・ミステリの女王ヴァルガスの傑作。『青チョークの男』『裏返しの男』のアダムスベルク警視シリーズ最新刊、CWA賞受賞作!

■シッラ&ロルフ・ボリリンド(スウェーデン)/久山葉子訳
『大潮』
満月の満潮の夜、ノードコステルの海岸で、裸の妊婦が砂浜に埋められ殺害された。儀式殺人か? 事件は被害者の身元すら分からないまま迷宮入りした。20数年後の現在。ストックホルムではホームレスを狙った残虐な暴行事件が連続発生していた。警察学校の3年生のオリビアは夏休みの課題としてノードコステルの事件を選んだ。それが自分や多くの人々の人生を大きく変えるとは思わずに……。驚愕の結末が待つ、傑作ミステリ。

■ロサ・リーバス&ザビーネ・ホフマン(スペイン)/宮崎真紀訳
Don de Lenguas
殺人の手掛かりは文学のなかにある。バルセロナを舞台に、新聞記者と文献学者の女性コンビが上流階級の有力者の死に隠されたさらなる事件を追う。ミスリードに継ぐミスリードが冴える傑作ミステリ!

■ウルズラ・ポツナンスキ(オーストリア)/酒寄進一訳 
Saeculum
呪いの伝説を持つ古城が聳える森で、ゲームの世界に浸り中世の生活を満喫する15人の若者たち。だがひとりが失踪、さらに外界から遮断された状況で嵐が訪れる。彼らを待ち受けていたある人物の罠とは。ウィーン出身の実力派作家が贈る圧巻のサスペンス!

■トーヴェ・アルステルダール(スウェーデン)/久山葉子訳
『海岸の女』
彼女は見知らぬ土地で、この世界の真実に出会う――北欧ミステリの女王の新たな誕生を告げる傑作登場!

ジャック・ルーボー(フランス)/高橋啓訳
『オルタンスの誘拐』
あの『麗しのオルタンス』の第二作がついに登場します。どうぞお楽しみに……。

【古典発掘・名作新訳版】
マージェリー・アリンガム/猪俣美江子訳
『キャンピオン氏の事件簿II』
『窓辺の老人』に続く、名探偵キャンピオン登場の英国ミステリの粋と呼ぶにふさわしい短編集。

■コリン・ワトスン/直良和美訳
『棺桶は新品同様』
「イギリスのどこにでもありそうな町」フラックスボローを舞台にした、知られざる英国本格ミステリの巧手ワトスンの第一長編を、本邦初紹介。真冬のさなかに起きた、状況が不審すぎる町の名士の変死事件に、温和なパーブライト警部が挑む。

ヘレン・マクロイ/駒月雅子訳
The Deadly Truth
近所の化学者宅から、自白剤として使用できる新薬を盗んだ女性。自宅に戻った彼女が飲みものにその薬を混入したことで、折しもひらかれていたパーティは一転して悲惨な告白大会と化す。そしてその夜、女性は何者かに殺害されてしまう……! 目撃者として事件に関わることとなったベイジル・ウィリング博士が推理の果てに導き出す真犯人とは? マクロイ屈指の謎解き純度を誇る傑作、本邦初訳で登場!

ウィリアム・アイリッシュ/稲葉明雄訳
『暁の死線【新版】』
ニューヨークで出会った孤独な男女の前に突然現れた男の死体。潔白を証明し故郷に帰るためのタイムリミットはたった4時間。『幻の女』と並ぶ、名作・名訳と名高い傑作サスペンスが新カバーで登場!


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