今月の本の話題

2018.10.11

世界にひとつしかない宝石をめぐる、さすらいの青年と孤児の旅。『白の王』

白の王
 廃墟となった塔が林立する“塔の森”。そこは“灰の雛”と呼ばれる孤児たちの縄張りだった。
 ある日孤児たちのもとに、魔鳥に盗まれた宝石を取り戻して欲しいと、ひとりの男がやってきた。魔鳥はどういうわけか、人間の子供を攻撃しないので、孤児たちは塔によじのぼり魔鳥の巣から金になりそうなものをいただいては、生活の糧にしていたのだ。
 タスランと名乗るその男は、月の悪霊のような白い肌に銀の髪、三白眼という異相の持ち主だった。人から預かって持ち主に届けることになっている大切な宝石を、油断した隙に魔鳥に盗まれてしまったというのだ。
 孤児のひとり、12歳の少女アイシャは、そろそろ子供といえない年頃にさしかかっていた。魔鳥は大人を容赦なく攻撃するため、成長してしまった“灰の雛”は、“塔の森”を出て行くのが習いだ。でもアイシャはまだ“塔の森”を出ていかなくてはならない。もう少し蓄えを増やさないと、外の世界で暮らしていけないのだ。
 タスランは宝石を見つけた代価として銀貨16枚を払うと言った。宝石を見つければ、その半分が自分のものになる。張り切って塔に登るアイシャ。幸運の女神は今回は彼女に微笑みかけたように見えた。魔鳥の巣に緑に光る美しい宝石があったのだ。
 見つけた! だがその瞬間、鋭い魔鳥の嘴がアイシャの身体を貫いていた!。 塔から落ちてしまう!
 そして気がついた時、緑色の宝石は彼女の胸にしっかり嵌まってしまっていた。宝石をえぐり出すわけにもいかず、仕方なくアイシャはタスランと一緒に旅に出ることに……。

 だがそれはただの宝石ではなかった。不思議な宝石をめぐる、アイシャとタスランの奇怪な冒険の旅が始まる。〈妖怪の子預かります〉〈不思議駄菓子屋銭天堂〉などで大人気の著者が放つ、『青の王』の世界を舞台にしたシリーズ第二弾。

  →魔族に守られた都。囚われの美少女。廣嶋玲子『青の王』

(2018年10月11日)



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