今月の本の話題

2018.09.06

隠れる場所がないガラス張りの迷宮で、連続殺人犯はどこへ消えたのか? 市川憂人『グラスバードは還らない』

グラスバードは還らない
『ジェリーフィッシュは凍らない』『ブルーローズは眠らない』と、『このミステリーがすごい!』国内篇や、『本格ミステリ・ベスト10』に続けて上位ランクインしている、期待の新鋭・市川憂人さん。
ずぼらだけれど切れ者の警部・マリアと、クールで皮肉屋の部下・漣のコンビが活躍する、人気シリーズの第3弾をお届けします!

1984年1月。マリアと漣は、大規模な希少動植物密売ルートの捜査中、得意取引先に不動産王ヒュー・サンドフォードがいることを掴みます。彼にはサンドフォードタワー最上階の邸宅で、秘蔵の硝子鳥(グラスバード)や希少動物を飼っているという噂がありました。捜査打ち切りの命令を無視してタワーを訪れた二人でしたが、あろうことかタワー内の爆破テロに巻き込まれてしまいます!

同じ頃、ヒューの所有するガラス製造会社の社員とその関係者四人は、知らぬ間に拘束され、窓のない迷宮に閉じ込められたことに気づきます。傍らには、どこからか紛れ込んだ硝子鳥もいました。「答えはお前たちが知っているはずだ」というヒューの伝言に怯える中、突然壁が透明になり、血溜まりに横たわる社員の姿が……。

小型飛行船、青いバラに続く、恒例の科学ネタはガラス。ガラス張りの迷宮で起こる連続殺人。隠れる場所のない密室で、犯人はどこへ消えたのか? 凶器をどのように持ち込んだのか? ガラスならではのトリックが炸裂する、本格ミステリの醍醐味がたまりません。

更に、今回はミステリ要素に加え、高層ビルでの爆発からの脱出劇といったサスペンス要素もあります。タイムリミットが迫る中、マリアと漣は犯人の手掛かりを掴むことができるのか? ハラハラしながら読み進めてしまう、ページターナーっぷりも見逃せません。

怒濤の論理展開が行われる推理パート、そしてあまりにも叙情的な幕切れなど、市川節も健在です。2018年要注目の本格ミステリを、どうぞご期待ください!

(2018年9月6日)



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