今月の本の話題

2018.08.09

ミステリ界の魔術師が贈る、いなせな親分の名推理! 泡坂妻夫『夜光亭の一夜 宝引の辰捕者帳ミステリ傑作選』

夜光亭の一夜
書評家の末國善己さんを編者としてお送りする、「時代小説のヒーロー×本格ミステリ」のシリーズ。柴田錬三郎『花嫁首 眠狂四郎ミステリ傑作選』、笹沢左保『流れ舟は帰らず 木枯し紋次郎ミステリ傑作選』に続く、好評シリーズの第3弾をお届けします!

今回の名探偵は、ミステリ界の魔術師・泡坂妻夫が生み出した、岡っ引の親分である宝引の辰です。〈亜愛一郎〉〈曾我佳城〉〈ヨギガンジー〉シリーズでお馴染みの著者は、実は時代ミステリの名手でもあったのです。

辰親分は、幕末の江戸、神田千両町に妻と娘と共に暮らす、いなせないい男。御用のかたわら、福引きの一種である“宝引”作りをしていることから、“宝引の辰”と呼ばれています。1995年にNHK金曜時代劇で、小林薫さんの主演でドラマ化されました。

そんな辰親分は、鋭い推理力と鉤縄を武器とし、子分の松吉と算治を従え、江戸を騒がせる怪事件に立ち向かっていきます。
殺された男と同じ彫物をもつ女捜しの意外な顛末を綴る「鬼女の鱗」。謎の画家が残した吉祥画を専門に狙う、怪盗・自来也の真意を探る「自来也小町」。美貌の女手妻師・夜光亭浮城の芸の最中に起きた、殺人と盗難事件の真相を暴く「夜光亭の一夜」

奇術師でもあった著者ならではの、奇抜なトリックと逆説に満ちた、至高の13編を選出しました。怪談めいたものもあり、安楽椅子探偵ものもあり、奇妙な動機を探り出すホワイダニットありと、バラエティに富んだ本格ミステリが勢揃い。
ミステリファンも充分楽しめますし、泡坂ファンならニヤリとする短編もあるので見逃せません。また、柔らかい「です・ます」調の一人称視点で進むため、時代ミステリ初心者にもおすすめです。

森美夏さんによる、凛々しい辰親分のカバーイラストが目印の本書を、ぜひお手にとってください!


(2018年8月9日)



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