今月の本の話題Science Fiction

2018.08.03

《叛逆航路》ユニバース新作長編! アン・レッキー『動乱星系』9月中旬刊行

『叛逆航路』『亡霊星域』『星群艦隊』の三部作でSF界の話題をさらった著者アン・レッキー。待望の新作長編『動乱星系』は、前三部作とおなじ宇宙を舞台にしており、時系列上はその直後から始まります。ただし地理的には前三部作のラドチ圏から遠く離れて、ストーリーや登場人物にも直接のつながりはない物語となっています。

『動乱星系』あらすじ】
AIたちの独立宣言と、人格分裂した専制君主どうしの内戦に揺れるラドチ圏から遠く離れた、辺境の星系国家。有力政治家の娘イングレイは、義兄との後継争いに敗れつつあった。彼女は大逆転を狙い、母の政敵の子であり、その重大な秘密を握る人物を流刑地から脱走させる。ところが引き渡されたのは、ガラルと名乗るまったくの別人だった。進退きわまった彼女は、ガラルになりすましをさせるという一か八かの賭けに出る。だがそれは次々と予想外の事態を招き、ついには異星種族をも巻きこむ大問題に発展し……。
ヒューゴー賞、ネビュラ賞、星雲賞をはじめ全世界計13冠制覇の《叛逆航路》ユニバース、待望の新作登場!

叛逆航路
《叛逆航路》三部作の大きな特徴といえば、主人公ブレクがAI人格を数千人の人体に上書きして同期させた生体兵器“属躰(アンシラリー)”であり、物語が複数の彼女の視点を通して語られること、そして舞台となるラドチ圏が“男女の性別の区別が一切なく、あらゆる人物が「彼女」と呼ばれる”特異な文化を持つこと、のふたつが挙げられます。
後者については、日本語やハンガリー語などさまざまな言語への翻訳者にインタビューした記事( 「彼女はたぶん男だろう」――あらゆる登場人物が女性形で呼ばれるアン・レッキー『叛逆航路』、5カ国語でどう訳す?)も、刊行当時におおきな反響をいただきました。こういう仮構を用いて現実を問いなおすのもSFならではのおもしろさのひとつで、それが文化のちがう日本でも星雲賞を受賞するなど強く支持されていることは、担当編集者としてもうれしいかぎりです。

新作『動乱星系』の舞台は、ラドチ圏から遠く離れた辺境の、まったく異なる文化を持つ人類宙域であり、ラドチとちがって性別の区別がある社会です……が、そこは著者アン・レッキーらしく、今回も読者の世界認識そのものをぐいぐい揺さぶってくる仕掛けがあります。くわしくは、ぜひご自分の目でたしかめていただければと思います。
(ちなみに原書Provenanceは2017年刊行で、今年のティプトリー賞特別賞を受賞し、ヒューゴー賞長編部門・ローカス賞SF長編部門・英国SF協会賞長編部門の最終候補となっています。)

前三部作とは独立した一冊完結の長編なので、本作だけでもお楽しみいただけますが、『叛逆航路』を読んでおくと、世界の見え方のちがいがますます際立って、読む楽しみが一段も二段も増すのではないかと思います。9月中旬の刊行をお楽しみに!

(2018年8月3日)




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