今月の本の話題

2018.07.18

約60年ぶりの新訳版はこんなにすごい! エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの冒険』[2018年7月]


巨匠の本格ミステリ名作短編集
全11編+序文を収録した新訳完全版



創元推理文庫のエラリー・クイーン新訳、最新刊は短編集『エラリー・クイーンの冒険』。アメリカで1934年に刊行された、本格ミステリの巨匠クイーンの記念すべき第一短編集です。今回の新訳版、いろいろとすごいのですが、何がどうすごいのか、ここでご説明申し上げたいと思います。

●《完全版》なのがすごい!
従来、創元推理文庫で出ていた井上勇訳『エラリー・クイーンの冒険』は、上記の1934年版とはいくつかの点で違いがあります。最大の相違点は、11編ではなく10編収録だったこと。これは巻末に置かれた「いかれたお茶会の冒険」The Adventure of the Mad Tea-Partyを名アンソロジー『世界短編傑作集4』に採録したため省いたからでしたが、このたび約60年ぶりの新訳版では割愛せず、11編すべてを収めました。

さらに、井上版で用いた原書では削除されていた「序文」(国名シリーズと同じ、J・J・マック氏が書いたという体裁のもの)も巻頭に収録。原書刊行から80年以上経って初めて、本書はいわば《完全版》として日本の読者の前に姿をあらわすことになります。

なお、『世界短編傑作集』を全面リニューアルして隔月刊行中の『世界推理短編傑作集』には、本書と同じ中村有希訳「いかれたお茶会の冒険」が収められます(4巻に収録予定。その全貌は『冒険』にもはさんである特製チラシで!)。

●推薦者がすごい!
今回の新訳版では、じつに頼もしい推薦者を得ることができました。それもふたり。本格ミステリ作家として大活躍中の有栖川有栖先生、そして青崎有吾先生です。クイーン愛読者としても知られるおふたりにお寄せいただいた、入魂のコメントの一部をご紹介しましょう。

 有栖川有栖先生「まさに論理の冒険。クイーンがすごいのは長編だけではない!」
 青崎有吾先生「ミステリ史上最も知的な11の冒険譚。拍手の準備をお忘れなく。」

どうですかこの超強力コンビ。お願いしておいてなんですが、本当に実現するとは思いませんでした……。両先生、ありがとうございます。おふたりの推薦コメント全文は、帯の裏表紙側に掲載しましたので、どうぞ実物をご覧ください。

●そのほかの顔ぶれもすごい!
すごいのは推薦者だけではありません。翻訳・中村有希、カバーイラスト・Ryoojing、カバーデザイン・内海由という三氏の組み合わせは、これまでのクイーン新訳でおなじみの鉄板トリオ。安心の翻訳は、長編と同じようにお楽しみいただけますし、逆に国名シリーズとは少しイメージを変えた表紙も気に入っていただけることと思います。

そして書評家・川出正樹氏による解説も必読。クイーン短編を読むこと、すなわち本格ミステリの楽しさを味わうことであると、丹念かつ熱く語っていただきました。各編の初出データなど、書誌情報もしっかり記載されています。

今回の新訳版、そのすごさがなんとなくでも伝わったでしょうか。何よりもまず、本書はとびきり面白くてとびきりよくできた本格ミステリの短編集ですので、ぜひお買い求めください。

エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの冒険』は7月20日刊行です。


大学に犯罪学の講師として招かれたエラリーが、その日起きたばかりの殺人事件について三人の学生と推理を競う「アフリカ旅商人の冒険」を劈頭(へきとう)に、「一ペニー黒切手の冒険」「七匹の黒猫の冒険」「いかれたお茶会の冒険」など、多くの傑作を集めた巨匠クイーンの記念すべき第一短編集。名探偵による謎解きを満喫させる本格ミステリ全11編に加え、初刊時の序文を収録した完全版。


(2018年7月19日)




【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

海外ミステリの専門出版社|東京創元社
バックナンバー