今月の本の話題

2018.05.15

大倉崇裕『福家警部補の考察』刊行記念 架空インタビュー

福家警部補の考察
――福家警部補の最新刊が出ましたので、ご本人や事件のエピソードをお話しいただければと思います。二岡さん、本日はよろしくお願いいたします。

 あ、どうも、お世話になります。機動鑑識班の二岡友成です。

――1話目の「是枝哲の敗北」で、二岡さんは聖南病院を退院して1週間、職場復帰2日目にして福家警部補の現場ということで、大変だったようですね。

 いやあ、病み上がりで連続ダッシュをしたり、無理がたたって再入院にもなりましたけど、大変なのは今回に限ったことじゃないんで。……ちょっと、これ録音してませんよね? 福家警部補の耳に入ったらそれこそ大変だから。あの人、魔女だの千里眼だの言われてますけど、本当に魔女だとしか思えないんですよ。4話目を読んでいただければ、僕が心底ぞっとしたことがわかると思います。

――「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」ですね。東京を出た新幹線が京都へ着くまでの2時間で解決する、非常にスリリングな一編です。福家警部補はしばらく京都に出張なさるということでした。寂しくなりますね。

 え、それは……たぶん寂しいと感じる前に何かが起こるような気がしますね。「のぞみ号」のときみたいに、かえって振り回されるかもしれないし。あれこれ考えると体に悪いので、とりあえず体調管理に努めます、はい。

――優等生のお答えをありがとうございます。ここの壁に耳はないと思いますけど、地獄耳の福家警部補ですからね。ところで、「是枝哲」のホームレスさん、「安息の場所」の酒屋のご主人、「のぞみ号」の靴磨きさんなど、名脇役というか味のある人物が登場するのも楽しみの一つです。

 受け売りですけど、ホームレス氏は本歌取りらしいですよ。本歌では酔っ払いの証言能力に問題ありの扱いをされていましたが、こちらでは重要な証人で、福家警部補に決定打を与える役回りです。

――あら、そうなんですか。伺って初めてわかることってありますね。何となくですが、「上品な魔女」では福家警部補がいつもと勝手が違うと感じて戸惑っているようでした。それについてはいかがでしょう。

 あの犯人、へんでしょ。理詰めが通用しないし、禁じ手もへったくれもない。うまく言えませんけど、天然というか素というか、行き当たりばったりかと思うと周到な感じもあるし、つかみどころがなくて。福家警部補も「つかみどころがない」と評されることがありますが、全く異なる方向性ですよね。下手したら共鳴していたかもしれません、紙一重ってやつで。あの事件、ほんと焦りましたよ。打ち合わせはしていたけど、実際目の当たりにすると……。

――そうでしょうね、読んでいてどきっとしました。共鳴というと、「安息の場所」の犯人には少しあったでしょうか。犯罪に容赦はしないけれど眼差しが温かい気がします。お酒に関するエピソードとしては『福家警部補の挨拶』に入っている「月の雫」が忘れがたい印象ですが、「安息の場所」でも酒豪の片鱗がうかがえます。左党一辺倒ではなく、缶しるこ愛にもあふれていて。

 そう、とにかく好きみたいですね。今回の表紙にも描いてあって、そのうちメーカーからファンレター代わりに送られてきたりして。真冬に冷たい缶しるこ、僕にはちょっと理解できませんけど。

――ふふ、一般人の理解を超える、そこが天才の天才たるゆえんかもしれませんよ。
 さて、そろそろ時間のようです。これからのご活躍を楽しみにしています。お体をいたわりつつ頑張ってください。本日はどうもありがとうございました。普段は落語関係の取材ばかりなので、とっても新鮮でした。

(2018年5月15日)



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