今月の本の話題

2018.01.25

「あっしには関わりのねえことでござんす」――本格ミステリと時代小説の名手が描く、凄腕の旅人の名推理! 『流れ舟は帰らず 木枯し紋次郎ミステリ傑作選』

流れ舟は帰らず
2017年3月に刊行し、「眠狂四郎が創元推理文庫に!」という意外性で好評をいただき即重版となりました、柴田錬三郎『花嫁首 眠狂四郎ミステリ傑作選』。担当編集者と、編者の末國善己さんとで「時代小説のヒーロー×本格ミステリのシリーズを刊行したいですね」とお話しした結果、待望のシリーズ第2弾をお届けすることになりました!

今回の名探偵は、「あっしには関わりのねえことでござんす」という決め台詞でおなじみ、木枯し紋次郎! 紋次郎は本格ミステリと時代小説における名手・笹沢左保が生み出した、天涯孤独な凄腕の旅人(たびにん)。旅人とは「博奕(ばくち)などで各地を渡り歩く人」で、「渡世人(博奕打ち)」と同じ意味です。
紋次郎は幼い頃に家を出て以来、己の腕のみを頼りに(戦闘にはめっぽう強い!)、博奕で生計を立てながら諸国をさすらっています。トレードマークは三度笠に縞の合羽、くわえた長い楊枝。
1972年に〈市川崑劇場〉として中村敦夫さん主演でドラマ化され、ドラマは人気番組となり、紋次郎は国民的ヒーローとして一躍有名になりました。

そんな紋次郎は、実は名探偵でもあったのです! 『人喰い』『霧に溶ける』『結婚って何さ』『空白の起点』などの傑作を生み出した笹沢左保ならでは、巧みな伏線やどんでん返しが多くの短編で描かれています。その中から、鮮やかなロジックが冴え渡る、本格ミステリ色の強い10編を選出しました。

兄弟分の身代わりとして島送りになった紋次郎がある噂を聞きつけ、島抜けして事の真相を追う「赦免花は散った」。瀕死の老商人の依頼で家出した息子を捜す「流れ舟は帰らず」。死罪となる直前、盗賊が遺した暗号の意味を解き明かす「大江戸の夜を走れ」
どの短編も、不思議な謎と意外な結末が描かれており読み応えがあります。他にも、犯罪に翻弄される人々の悲哀、人を信頼することができない紋次郎の孤独さなど、心理描写に胸が締め付けられます。

森美夏さんによる、渋くて格好良い紋次郎のカバーイラストが目印の本書を、ぜひお手にとってください!


(2018年1月25日)



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