今月の本の話題

2017.12.27

終末の夜の片隅で。リリー・ブルックス゠ダルトン『世界の終わりの天文台』(1月12日発売)

どうやら人類は滅ぶらしい。最後の撤収便に乗らず、北極の天文台に残った老学者は、取り残された見知らぬ幼い少女とふたりきりの奇妙な同居生活を始める。一方、帰還途中だった木星探査船の乗組員サリーは、地球からの通信が途絶えて不安に駆られながらも航海を続ける。終末を迎える惑星の極北で、宇宙の孤独な大海で――もしも世界が終わるなら、あなたは誰と過ごしたいですか? 『インターステラー』×『渚にて』のSF感動作。

世界の終わりの天文台
『世界の終わりの天文台』では、滅びゆく世界を背景に、ふたりの語り手がみずからの過去、現在、そして未来と向き合いながら、長い長い旅をつづけます。はたして、その最後には何が待ち受けているのか?

背景で進行中の大規模な事態とは対照的に、新人ばなれした抑えた筆致でゆったり、細やかに描かれる主人公ふたりの物語。長い冬の夜にじっくりと読むには、うってつけの作品です。
また、作中ではいくつかのものごとがあえて曖昧に描かれています。手がかりは随所にちりばめてありますが、読者の読解にゆだねる(あるいは挑戦する)余地をたっぷり取った作品でもあります。それらをどう受けとったか、読んだあとに他人と話しあってみたくなる、読書会にぴったりの作品だと思います。本国でもやはり同様に思われたようで、著者サイトにも読書会でのテーマ例を紹介するページがありました。参考までに以下に訳出いたしましたが、皆様もぜひ、本書で読書会をひらいてみてはいかがでしょうか?

※ 以下の文章は、ストーリー展開の主要部に触れています。
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1. 宇宙空間と北極圏という異なる舞台は、登場人物とその内面への旅をどのように反映しているでしょうか?
2. オーガスティンに共感するのは難しかったですか? 物語が進むにつれて、彼に対する評価は変わりましたか?
3. アイリスが天文台にいた理由は、しばらくは謎です。あなたはどのように納得しましたか? それとも、単純に受け入れて読み進めましたか?
4. オーガスティンがたびたび目撃するホッキョクグマはどういう存在でしょうか? 実在するのでしょうか?
5. 終盤、オーガスティンの現実認識に疑問を持つかもしれません。実際には何が起こっていたのだと思いますか?
6. オーガスティンとサリーがどのように結びついているか、気づいたのはいつですか? あなたが、ふたりがお互いの関係に決して気づかないと思うとしたら、それはなぜですか?
7. サリーの過去(子ども時代と結婚後の両方)は、〈アイテル〉上での彼女の経験にどういう影響を与えているでしょうか? 彼女は、若い頃から抱えていた問題と、どのように向き合っているでしょうか?
8. ほかの宇宙飛行士たちとの関係は、作中でサリーをどのように変えたでしょうか?
9. ラストの2章は予想していましたか? どこで謎が解けましたか? 解けていない疑問はありますか?
10. 本作では、最後に重要となることは何か、という問題が提示されます。あなたは答えを出しましたか? それらの答えを、本作はどのように描いていますか?
11. 作中で、人類に何が起こったのかについては明確に語られません。この語らないという点をどう解釈しましたか?



(2017年12月27日)




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