今月の本の話題

2017.12.18

必ず勝つための手段とは? 韓鐵均/洪敏和訳『勝つには理由がある』

勝つには理由がある
「幼い子供が泣いてどうにもなだめられないと、乳母はよくその子の性質や好き嫌いについてすこぶる妙をえたことを考える。遺伝まで引っぱり出して、お父さんのときからもうその素質があるなどという。こんな思いつきの心理学を続けていると、そのうちに乳母はピンを見つけたりする。ピンがすべての本当の原因だったというわけだ。
 アレクサンドル大王が若かったころ、名馬ブケファルスが献上されたが、どの調教師もこのあばれ馬を乗りこなすことができなかった。ありきたりの人間だったら、「こいつはたちの悪い馬だ」とでも言っただろう。ところがアレクサンドロスはピンをさがし、間もなく見つけた。つまり、ブケファルスが自分の影にひどくおびえていることに気がついたのだ。おびえて跳ねあがれば影も跳ねあがるので、きりがなかった。だが、かれはブケファルスの鼻づらを太陽の方に向けてそのままにおさえ、馬を安心させ、疲れさせることができた。こうしてアリストテレスの弟子は、情念の本当の原因を知らないかぎり、われわれは情念に対して全く無力なことを、すでに知っていた。後略」(白水社版アラン著作集より)

 これはアランの幸福論「名馬ブケファルス」の一部で、状況に対処する場合、本当の原因であるピンを見つけることが肝要だというような趣旨である。

 囲碁では、361路の碁盤に石を打っていき、囲った地所が多い方が勝ちとなる。様々な打ち方があり、どれを選択するかで、全く別の碁になる。石の急所を見つけることが肝要で、そこが分かれば、割と簡単に進めることが出来る。

 本書は、布石の特徴から定石以降の変化、中盤と石の方向そしてヨセまでの流れや死活まで、各々の局面での勝つ為の急所を取り上げた。石が混み合う前、そして混み合ってからの対処の仕方が学べるはずである。肝心なのは、様々な局面でピンを探すことだ。

 余談ですが、弊社には小林秀雄訳のアラン「精神と情熱とに関する八十一章」というのもある。ご一読を。

(2017年12月18日)



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