今月の本の話題

2017.11.29

音楽と魔法に彩られた、華麗な異世界ファンタジイ『吟遊詩人の魔法』[2017年11月]

吟遊詩人の魔法 上 吟遊詩人の魔法 下
 かつてエイヴァールの国では、吟遊詩人の歌には魔法が宿っていた。吟遊詩人が学ぶ学院の〈視者〉たちが強大な魔法の力をふるい、王権とならびたつ権力を握っていた。だが〈視者〉の一部が禁断の魔法に手を染めたために争いがおき、学院は弱体化し、吟遊詩人の魔法は失われてしまった。

 エイヴァールの都では、十二年に一度、盛夏祭に行われる競技会で最も優れた技を披露し優勝した吟遊詩人に〈銀の枝〉が与えられる。いまや国王にすら絶大な影響力を及ぼす宮廷詩人ニッコン・ジェラルドも、競技会の優勝者だった。
 競技会を前に、都には技自慢の吟遊詩人たちが集まっていた。優勝の呼び声も高いダリエン・アルデムーアとマーレン・ハンブルリ。金髪に茶目っ気を帯びた青い瞳、太陽のように輝くダリエンと、黒髪に影のような黒い瞳、謎めいた月光のごときマーレン。対照的な二人ながら、才能と名声に恵まれたひと組だ。
 彼らを物影から見ていたのは、名家の出であるにもかかわらず、強権的な兄から逃れ、女ながらに吟遊詩人をめざすリン。

 そんななか、異国を放浪していた当代最高の吟遊詩人で〈視者〉でもあるヴァラニル・オクーンが姿をあらわし、宮廷詩人に牛耳られた国王を糾弾する歌を、人々の前で歌う。ダリエンとリンは、ヴァラニルに導かれて〈道〉を求めて都をあとにするが、宮廷詩人の放つ追手が、彼らに迫る。

 吟遊詩人たちの友情と裏切り、かつて学院の〈視者〉の身をほろぼしたという血の呪術、ダリエンと美少女との秘められた恋……。

 マキリップを思わせる、歌と音楽と鮮やかな色彩に彩られた異世界を描きだす驚異の新人の話題作。秘められた魔法と、陰謀が渦巻く都を舞台に、吟遊詩人たちの密かな戦いを描く本格ファンタジイ。

(2017年11月29日)



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