先日、以前勤めていた会社の後輩がカレーバル『ゴーダカフェ』(公式ツイッター:https://twitter.com/goda_cafe)なる飲食店を開業し、そのオープニングに行ってきました。最寄り駅が、世田谷線の松陰神社前。ご存知の方も多いと思いますが、世田谷線は田園都市線の三軒茶屋と、京王線の下高井戸の間を結ぶ路面電車です。都電荒川線は何度か乗車したことがありましたが、世田谷線は今回が初めてでした。お店からの帰りに少し周辺を散歩し、気になっていた保護猫が接客をしてくれるという『Cat's Meow Books』(公式ツイッター:https://twitter.com/CatsMeowBooks)にも立ち寄り、充実した休日を過ごすことができました。世田谷線沿線は落ち着いた町並みと、個性的なお店が多い商店街が点在しており、とても暮らしやすそうな雰囲気でしたね。

 さてさて、ここからが本題です。そんな世田谷線沿線の町を舞台にしたミステリ、浅野里沙子さんの『白い久遠』が刊行となります。作中で具体的な町の名前は出していませんが、三軒茶屋から世田谷線で一駅か二駅。おそらくは西太子堂か若林、あるいは松陰神社前からすぐの裏通りにある「藤屋質店」を舞台にした、大人のミステリです。僕自身は、残念ながら(幸いにしてなのかな?)質屋を利用したことはないですが、以外とどこの町にもありますよね。電柱の案内看板に、病院などと同じくらい質屋の表記が見受けられます。
 主人公は、化粧品会社が経営する美術館で学芸員をしていた香芝涼子。実家の「藤屋質店」の店主である、祖父が体調を崩した際に店に戻ってきており、現在は見習い社員(?)です。昨今の質店やリサイクルショップに持ち込まれることの多いブランド品だけでなく、骨董品が多いのが「藤屋質店」の特徴。美術品は学芸員時代の経験を生かしてそつなく対応できますが、骨董品になるとまだまだ修行中という涼子が、持ち込まれてくる質草から生まれた謎に巻き込まれていく姿を、優美な筆致で描きます。
 ところで、カバーイラストの涼子は、作中に登場する画家・藤田嗣治の有名な写真をイメージしたものです。もちろん、「藤屋質店」の看板猫も作中に登場しますよ。

 話を最初に戻しますと、『ゴーダカフェ』の宣伝も。10種類のカレーと、サンドイッチ、西インド料理をベースとしたおつまみの楽しめるお店です。お近くの方はぜひ!  一方『Cat's Meow Books』で、少しだけ店長さんとお話ししたところ、A・E・ヴァン・ヴォークトの『宇宙船ビーグル号の冒険』が売れてますとのこと。かわいい猫が出迎えてくれる同店もぜひ!

(2017年10月19日)



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