「斬新というか奇抜というか、あまりの展開に呆然! 抜群に面白かった!」加納朋子氏

奇想と本格ミステリの融合が、実に見事。この頭の働きには、素直に脱帽するしかありません」北村薫氏

「展開といい不可能演出といい最後の解明といい、水際立った本格ミステリである」辻真先氏



高レベルの最終候補作が集まり、史上稀に見る激戦となった第27回鮎川哲也賞。しかしその激戦を圧倒的な評価で制し、選考委員が満場一致で「これでしょう」と決まったのが本書『屍人荘の殺人』です。

関西にある神紅大学。そのミステリ愛好会(ミステリ研究会とは別団体。なお部員は二人である)に所属する俺、葉村譲は、謎をこよなく愛する会長・明智恭介先輩によって「何か事件が起きそうだから」と、半ば強引に“いわくつき”の映画研究部の夏合宿に参加にすることに。部外者の参加は断られていたが(そりゃそうだ)、突如現れた同じ大学の探偵少女、剣崎比留子さんとのある取引によって、参加できることになったのだ。
合宿地は湖のほど近くに建つペンション、紫湛荘。到着早々行われたホラームービーの撮影、夕食はバーベキュー、その後の肝試しと、“いわく”など気にする風でもない大学生たちの楽しげな夏合宿は続く。俺と明智さんもこのまま事件など起こらないと高を括っていた。
しかし。
肝試しの最中、想像しえなかった事態に遭遇し、俺たちは紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされたのだ! 一体なにが起こっているというのだ。理解できないまま緊張と混乱の一夜が明けると、映研部員の一人が密室で惨殺死体となって発見された! こんな極限状況において、一体誰がなんのために殺人を冒すのか。外側と内側から襲い来る恐怖の淵で、俺は、明智さんは、比留子さんは、生き残ることができるのだろうか――。



ここで、プルーフ版読者モニターさんからの感想の声をお届けします。

これぞ”現在”のド本格!
理知の世界において類を見ないほどのサスペンスに巻き込まれながらも、その異常な状況が全て、フェアな手掛かりによるトリッキーな推理と、意外な解決のために奉仕されていく。(30代・男性)

魅力的な人物が次々に登場し、その会話にところどころクスッとさせられ、リーダビリティの高さから読書を中断する気は全く起こらず、あっという間に「世界が一変して出来た絶望の光景」に到達、ほんの少しの無駄もない特殊設定に感動すら覚えました。(30代・男性)

『意外』と『規格外』の融合を感じました。読んだ直後、抜け出せてよかったと思う反面、まだこの世界に留まっていたいと感じるような余韻があります。(20代・女性)

クローズドサークル+密室という、今では何の変哲もない状況をいかに生み出すか。まさに『想像しえなかった事態』としか言いようがない。この作品の探偵でまた本格ミステリを書いて欲しい。新たな才能の出現に拍手喝采。(40代・男性)

ところどころのリードにまんまと導かれ、何度も驚く自分がおりました。文章で魅せる様々な箇所。伏線の回収も含めて驚かせ、盛り上げる、みっしりとした充実の密室殺人劇。古典とライト、ベーシックな推理と想像外の出来事。一気に引き込まれあとはラストまで身をまかせられる、新人離れの語り口でした。(40代・女性)

92ページで、世界は変わる。
選考委員をして「傑作」と言わしめ、読者からも熱い声が続々届いている『屍人荘の殺人』。今年マストリードの本格ミステリです。

(2017年10月6日)



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