今月の本の話題

2017.09.06

横溝正史(?)☓ハリー・ポッター(!)第2回創元ファンタジイ新人賞優秀賞受賞『ぬばたまおろち、しらたまおろち』白鷺あおい【2017年9月】

 両親を交通事故で失い、ひとり伯父の家に引き取られた綾乃。ひとりぼっちの綾乃には、誰にも言えない秘密の親友がいた。
 それは幼いころ洞穴の割れ目で眠っていたところを見つけた、掌に載るくらいの小さな白蛇アロウ。人間の言葉をしゃべる不思議な白蛇はみるみる成長し、綾乃が14歳になる今では立派な大蛇だ。両親が亡くなって辛いときにもアロウはなぐさめてくれ、事故で怪我をした足のリハビリも励ましてくれた。綾乃にとっては大切な存在だ。

 14歳になった今年の夏、綾乃は村の雨乞い祭の舞い手に選ばれた。だが、祭の当日、サーカスから逃げ出したアナコンダが現れ、村は大混乱に。そんななか綾乃は謎の男に襲われる。危うし綾乃!
 だが、そこに疾風のように箒で現れ、間一髪彼女を救ったのは、村に滞在して妖怪の伝承を実地調査していた美人の女性民俗学者の大原先生だった。
 え? 箒? 箒で空を飛ぶのは……魔女!? 魔女の大原先生、そしてアロウの活躍もあって無事事態は納まるが、こんなこと村のみんなに説明できるはずもない。
 綾乃はそのまま先生の母校ディアーヌ学院に連れていかれ、そこで学ぶことに。
 だが、ディアーヌ学院は妖怪たちが魔女と一緒に魔法を学ぶ奇妙な学校だった。岡山の田舎、横溝正史そのままの世界から一転、ハリー・ポッターばりの魔法学校(でも妖怪がいる)で学ぶことになった綾乃の運命やいかに?

 読めば絶対好きになる。奇想天外、痛快無比、学園ファンタジイの決定版!

●この作品はこんな本を参考にしています

参考文献
森鷗外『森鷗外全集11 ファウスト』(ちくま文庫、一九九六年)
宮沢賢治『宮沢賢治全集8』(ちくま文庫、一九八六年)
宮沢賢治『新編 宮沢賢治詩集』(新潮文庫、二〇一一年改版)
ロバート・A・ハインライン『夏への扉』(ハヤカワ文庫SF、二〇一〇年)
横溝正史『八つ墓村』(角川文庫、一九七一年)
横溝正史『悪魔の手毬唄』(角川文庫、一九七一年)
グリム兄弟『初版 グリム童話集1』(白水社、二〇〇七年)
グリム兄弟『完訳 グリム童話集(一)』(岩波文庫、一九七九年改版)
森島恒雄『魔女狩り』(岩波新書、一九七〇年)
ゲリー・ジェニングズ『エピソード魔法の歴史』(現代教養文庫、一九七九年)
上山安敏『魔女とキリスト教』(講談社学術文庫、一九九八年)
西村佑子『『グリム童話』の魔女たち』(洋泉社、一九九九年)
度会好一『魔女幻想』(中公新書、一九九九年)
池内 紀『悪魔の話』(講談社学術文庫、二〇一三年)
木下 浩『岡山の妖怪事典―妖怪編―』(日本文教出版株式会社、二〇一四年)
木下 浩『岡山の妖怪事典―鬼・天狗・河童編―』(日本文教出版株式会社、二〇一五年)
引用に際し、歴史的仮名遣いは現代仮名遣いにあらためました。


(2017年9月6日)



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