物語の主人公、めぐみは三人の恋人(しかも全員小学校時代の同級生!)を器用に転がし貢がせ、贅沢な生活を送っている、自称“悪女”だ。自分が何より大切で、男の人は自分の生活を豊かにするための財布、女の人は自分の優位性をはかるものさしにしてしまう。クラスメイトにいたら絶対友達になりたくないな、と思う人物です。

この設定を聞いただけで、熱心な辻堂ファンならあれ? と思うはず。あまりに既刊の辻堂作品とは主人公の造形が違うのですから。「これまでの主人公は“いい子”が多かったので、性格の悪い人に挑戦したかった」と、辻堂さんは過去にない強烈なキャラを主人公に据えました。

そんなめぐみの周りにいる登場人物たちも曲者揃い。ITベンチャー企業の若き社長、病院を経営する医者一族の息子、六本木に居を構える大地主の息子とそれぞれ超高スペックな三人の恋人、めぐみの裏の顔を知りつつ連絡取り合う二人の女友達。そして相棒として一緒に事件を追う婚活パーティーで知り合った山本……。
一癖もふた癖もある彼らを間を自由に行き来するめぐみですが、突如ゴミ捨て場に監禁されたり、塩酸入りの化粧品をわたされたり、不審な出来事がいくつも身に降りかかります。そして、どんどん事件は加速していき……。

プライドが高くわがままなめぐみはどうなってしまうのか?! 張り巡らされた伏線と次々に起こる事件、息もつかせぬ展開にページを繰る手が止まりません。彼女の追い詰められっぷりをいつのまにか楽しく読んでいる自分にきっと気がつくはず。

(2017年7月25日)



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