今月の本の話題

2017.07.20

世界的ベストセラー作家渾身のミステリ。ルシンダ・ライリー『蘭の館』

 レマン湖のほとりに建つおとぎ話の城のような館〈アトランティス〉。館の主は富豪で、世界中から六人の女の赤ん坊を迎え、この館で養育した。美人のマイア、リーダー格のアリー、仲裁役のスター、現実主義者のセセ、慈愛の人ティギー、情熱の人エレクトラ。養女たちはそれぞれプレアデス星団にちなんで命名され、愛情をこめて育てられた……。

 長女で翻訳家のマイアは滞在先のロンドンで養父の突然の死の知らせを受けた。全てを放り出して至急館に帰ったものの、養父の遺体は遺言によってすでに水葬されてしまい、対面も叶わない。何故自分たち娘にまで秘密で葬られなくてはならなかったのか? 
 マイアは自分たちが養父について何も知らないことに愕然とする。

 悲嘆に暮れる娘たちに養父が遺したのは、天球儀に刻まれた各々の名前と、出生地らしい座標の数字だった。

 マイアの座標が示すのは、ブラジル、リオ・デ・ジャネイロにある名家アイレス・カブレル家の屋敷〈蘭の館〉。「ここがわたしが生まれた家なの?」希望と不安を胸に屋敷を訪ねたマイアだったが、当主の老女に手ひどく拒絶される。だが、老女のメイドが密かにマイアに渡した手紙から浮かびあがってきたのは、ひとりの女性の哀しい物語と、一族の秘密だった……。

(2017年7月20日)



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