大観衆の前で消えた凶器
西部劇の英雄、凶弾に死す

競技場に会した“容疑者”は二万人超!
巨匠クイーンの転換点となった意欲作



エラリー・クイーン〈国名シリーズ〉第6弾『アメリカ銃の謎』の登場です。

クイーンの著作の中では比較的マイナーな部類にはいると思われる本書。ひょっとすると、今回の新訳版で初めて読む、というかたも多いかと思われます。ですがご安心を。本書は〈国名シリーズ〉の一作として恥じぬだけのできばえを有する作品です。

『ローマ帽子の謎』では劇場、『フランス白粉の謎』では百貨店、『オランダ靴の謎』では大病院……と、〈国名シリーズ〉でクイーンは多くの人が出入りする場所を、好んで事件現場に選んできました。本書はその究極形といってもいい作品で、多数の観客を収容するスポーツ競技場で起きた殺人を扱います。ロデオショウの出演者、関係者、招待客、一般客を含めると居合わせた人は二万人超! エラリーは、その全員を「容疑者」と仮定したうえで、消去法推理で犯人の特定に挑みます。

本書のもうひとつの眼目は、「消えた凶器」の謎。被害者はロデオショウでおこなわれた一斉射撃のあと、射殺死体で発見されるのですが、カウボーイたちの持つ四十五挺の銃は、科学分析の結果、いずれも凶器ではないと判明します。観客が所持していた銃も回収されますが、発砲されたものはありません。そして、警察の必死の捜索にもかかわらず、会場のどこからも凶器は発見されないのです。いったい、凶器の銃はどこに消えてしまったのか。エラリーはこちらの問題にも頭を悩ませます。

解説は毎回、クイーンを敬愛する作家のかたがたにご執筆いただいていますが、今回は太田忠司先生にお願いしました。「青春小説としての国名シリーズ」と銘打たれた、見事な解説をお寄せいただいております。結末には触れていませんので、先にお読みいただくことも可能です。

エラリー・クイーン『アメリカ銃の謎』は7月12日発売予定です。


ニューヨークのスポーツの殿堂〈ザ・コロシアム〉に二万の大観衆を集め、西部劇の英雄バック・ホーンのショウが始まる。カウボーイたちの拳銃が火を噴いた次の瞬間、そこには射殺死体が転がっていた。だが不可解なことに、被害者のものを含む四十五挺の銃はいずれも凶器ではない。客席にいたエラリーは、大胆きわまる犯罪の解明に挑む! 〈国名シリーズ〉第六弾。

(2017年7月10日)




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