今月の本の話題

2017.06.12

あなたも戦国武将の気分が味わえる? 金成来/洪敏和 訳『強者は中央を目指す』

 囲碁は囲った処が多い方が勝ちというところからか、捨石等のテクニックを戦いの極意に求めてか、領地争いに明け暮れた戦国武将に人気があった。なかでも織田信長は、本能寺の変の前夜、日海(後の本因坊算砂)と利玄の対局を鑑賞していたというエピソードがある。その対局では三コウが出来て、以降三コウは不吉なものとされた。また徳川家康は、囲碁や将棋を専らにするものに扶持を与えて庇護した。このことは幕府瓦解まで続いたという。

 さて戦は、成り行きで籠城戦になることがある。籠城と言えば、古くはトロイア戦争、日本でも三木城の水攻めとか、小田原城の攻防が有名だが、大概が籠城側の負け戦に終わっている。籠城というわけではないが、項羽の最後も四面楚歌とか言われ、似たような結末だった。稀に籠城が成功するのは、外に援軍がある場合のようだ。

 囲まれた石は、呼吸点が最低二つないと死んでしまう。だから石が囲まれることは極力避けなければならない。また碁盤の第2線のことを敗線と言うが、第2線ばかりでは八つ這わないと生きない(六死ハ生という)ので非常に効率が悪い。また第4線を勢力線という。勢力はすぐには地にならないけれど、戦いになればかなり有効に働く。囲碁の格言で「2線を這うバカ、4線を這わぬバカ」というのがあるくらいだ。そうは言っても、第4線にばかり打っていると、地が足りなくなることもある。そこが囲碁の面白さであり、難しさでもある。

 ともあれ序盤で辺や隅に封じ込められると、狭い範囲で生きを図らなければならなくなり、効率の悪い手を何手も強いられてしまう。故に、常に封鎖されないことを念頭に置いていなければならない。しかしながら、ただ中央へ進出すれば良いというものでもなく、切断されないように打つことにも配慮が必要である。

 そんな訳で本書のテーマは、切断を避けながらスピーディーに中央への進出する方法であり、棋力向上の手助けが出来ればと願っている。


(2017年6月12日)



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