今月の本の話題

2017.04.26

魔族に守られた都。囚われの美少女。廣嶋玲子『青の王』

開巻、たちまち壺中天に吸い込まれる楽しさ。
ページ一枚一枚が絵双紙をめくるよう。
――井辻朱美

アラビアンナイト、ラピュタ、ナディア、
少年と少女の予期せぬ出会いには常に冒険の始まる予感がしてわくわくします。
人魔を問わずその足で立ち、選ぶ姿は美しいです。
――書泉ブックタワー 山田麻紀子

〈妖怪の子預かります〉のシリーズでは、江戸時代、長屋住まいの少年弥助と妖怪たちの出会いを、ときに愉快に、ときにほろりとさせる(ちょっぴり怖いところもありますが……)筆致で描き、『鵺の家』では、日本の旧家に引き取られた少女が、一族を縛る呪いと戦い悲劇の連鎖を食い止めようと奮闘する様を感動的に描いた著者が、今度はがらりと趣をかえ、魔族や魔物が存在するきらびやかで魅力的な異世界を創造しました!

 物語の舞台は砂漠に咲く水の都、奇跡の町ナルマーン。水に浮かぶ銀の王宮。上空には翼を持つ魔族が飛び交い、豊かな水をたたえた池の中には魚や竜の姿をした魔族が泳ぐ。普通は人間を嫌い、人間を避けているはずの魔族がナルマーン王には絶対服従をしている。なぜなら初代ナルマーン王に従うべく神に定められたのだから。以来、代々の王は魔族を支配し、ゆえにどんな強国といえどナルマーンには手を出せないのだという……。

 ハルーンはそんなナルマーンに住む孤児の少年だ。あるとき盗みの疑いをかけられ、その罰として古井戸に投げ込まれてしまう。もうだめだ、と思ったのも束の間、不思議なことにハルーンは怪我ひとつなく古井戸の底に横たわっていた。無事だったのはいいが、井戸は深く、地上ははるか上だ。なんとか脱出しようと道を探すハルーンの前に、井戸から伸びる謎の通路が……。
 長い長い地底の通路。その先に広がる巨大な空間。そこには螺旋を描く白銀の塔がそびえていた。塔の前には深い穴があり、そこを渡るのは一本の丸太橋のみ。しかも橋の手前にはおびただしい数の人間や獣、魔族の骨が転がっていったのだ。だが、どうしても塔に行きたい。その強い思いに突き動かされるように橋を渡ったハルーン。無事辿り着いた塔には豪華な部屋に幽閉された美しい少女がいた。自分の名前も知らず、外の世界も知らず、何者かが血を取りに来るのをひたすら待つ日々を送る不思議な少女。ハルーンはその少女を助け、外の世界に連れ出す決心をした。
 だが、外に出た2人を追ってきたのは、なんとナルマーンの正規軍だった!

 果たしてふたりの運命は?

 鮮やかな色彩きらめく宮殿。美しく奇怪な姿の魔族。空をゆく翼船。
 めくるめく想像の世界がここに!


(2017年4月26日)



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