ウィーンの女弁護士エヴェリーンとドイツの刑事ヴァルター、ふたつの異なる事件が交わる時、その恐るべき全貌が明らかに……。
 見事なストーリーテリングと、魅力的な登場人物で大評判になった『夏を殺す少女』の続編『刺青の殺人者』がついに登場します。



 前作でドイツの刑事、ヴァルター・プラツキーと、オーストリアの女性弁護士エヴェリーン・マイヤースのファンになった皆様! 今回もライプツィヒとウィーンと、活躍の場こそ違いますが、ふたりとも健在。
 ヴァルターは、男手ひとつで育てていた娘ヤスミーンがエジンバラに語学留学をすることになり、心配半分、寂しさ半分の状況。丁度空港で娘を見送った直後、若い女性の死体が発見されたとの連絡を受ける。現場に急行したヴァルターが見たのは、貯水池でボートのスクリューに引っかかっている、全身の骨を折られた若い女性の遺体だった。
 遺体の身元はじきに判明した。ベルリン在住の19歳の女性ナターリエ、麻薬をやっていた痕が体に残っていた。
 身元確認のためにベルリンから呼ばれた母ミカエラによると、ナターリエは妹のダーナと一緒に家を出ていたらしい。だが、ナターリエは殺され、ダーナは行方知れずに。ミカエラは、ダーナを見つけ、ナターリエ殺しの犯人に復讐しようと、半ば強引にヴァルターを引っ張り込んで探し始める。

 一方、ウィーンでは刑事弁護士エヴェリーン・マイヤースが、殺人容疑がかかっている医師コンスタンティンから弁護の依頼を受けていた。
 恋人で私立探偵のパトリックは何故か依頼人のコンスタンティンを疑っていて、弁護を引き受けないようにしつこく忠告する。それを無視して弁護を引き受けたエヴェリーンだったが、依頼人の度重なる嘘に、次第に苛立ちを募らせていた。

 一見なんの関係もない、ふたつの国のふたつの事件。だが、調べが進むうちに明らかになったのは……

 今回は被害者の母ミカエラのキャラクターが秀逸。とにかく強引、これと思ったら自分の危険もヴァルターの迷惑も顧みず突っ走ります。亡き妻の面影があるために、ヴァルターは彼女が気になってしまい、突き放すことが出来ず、ついつい引っ張られて無茶な捜査をさせられてしまう。

 そして前作『夏を殺す少女』からいい雰囲気だったエヴェリーンと恋人の私立探偵パトリック。お似合いのふたりには、エヴェリーンが弁護を引き受けた件が原因で暗雲が立ちこめます……。

 事件も、人間関係も一層パワーアップして面白い、『夏を殺す少女』を読んだ方はもちろん、この作品から読んでも絶対面白い! 自信をもってお薦めします!!!

(2017年4月10日)



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