“謎”の第一部。
“驚愕”の第二部。
そして、“慟哭”の結末。


3月21日発売のエリザベス・ウェイン『コードネーム・ヴェリティ』を言い表すとしたら、まさにこの一文がふさわしいと思います。

第二次世界大戦中、ナチ占領下のフランスでイギリス特殊作戦執行部員の若い女性が、スパイとして捕虜になります。彼女は親衛隊大尉に、厳しい尋問をやめる代わりにイギリスに関する情報を手記にするよう強制され、インクと紙、そして二週間を与えられます。その手記には、親友である補助航空部隊の女性飛行士マディの戦場の日々が、まるで小説のように綴られていました。彼女はなぜ手記を物語風に書いたのでしょうか?

本書はすべて手記で構成されており、この女性が書いた物語風のものが第一部になります。囚われの身で書いた手記には謎めいた記述がたくさんあり、読んでいるうちにどんどん疑問がわいてきます。しかし第二部の手記を読むと、さまざまな謎がすべて解決され、驚愕の“真実”が判明します。そのカタルシスたるや、言葉では言い尽くせないほどです。「二度目に読んだとき、あなたは一度目よりもゆっくりページをめくり、謎を解くためのすべての手がかりがしっかりちりばめられていたことに気づくはずだ」という書評が「ニューヨーク・タイムズ」紙に掲載され、必ず再読すべき物語であると高く評価されました。

さらには、本国アメリカでの刊行直後から、たくさんの読者が涙したという慟哭の結末も待ち受けています。翻訳原稿でも、刊行前の校正作業中に校正者が「泣いてしまって仕事にならなかった」という感想を伝えてくれたほど。担当編集者であるわたしも、編集作業中くり返し読んでいるのに、そのたびに涙がにじんできてしまいました。いつまでも記憶に残り続けるんだろうな。そう思わさせる大作です。

本書は「ニューヨーク・タイムズ」をはじめ数多くの書評誌で話題を集め、アメリカ探偵作家クラブが授与するエドガー賞のヤングアダルト部門最優秀作品となりました。またアガサ賞やゴールデン・カイト賞、カーネギー賞などの候補になったり、十指にあまる団体や機関で、その年のベスト・ブックに選ばれています。なので、日本でもいつかはどこかの出版社で翻訳出版されたと思いますが、弊社で刊行できたのは、ひとえに翻訳者の吉澤康子先生のおかげです。訳者あとがきに詳細な経緯が書かれていますが、本書は吉澤先生の持ち込みによって出版が決定しました。アメリカの書評誌で見つけ、実際に作品を読んで「これはぜひ日本語に訳したい」と思われたそうです。

担当編集者としては、これほどすばらしい作品の編集にたずさわり、日本の読者の皆さんにご紹介できることをとても誇りに思います。

『コードネーム・ヴェリティ』は3月21日ごろ発売です。最後の最後まで読者を翻弄する圧倒的な物語を、どうぞお楽しみください!

(東京創元社S)

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■海外の書評より

巧みに組み立てられた、必ず再読すべき物語だ。……二度目に読んだとき、あなたは一度目よりもゆっくりページをめくり、謎を解くためのすべての手がかりがしっかりちりばめられていたことに気づくはずだ。――〈ニューヨーク・タイムズ〉

結末にわたしは泣いた。……この途方もなくすばらしい、胸を引き裂かれるようなふたりの少女の物語を、あらゆる人が読むべきだ。――〈ガーディアン〉

いつまでも記憶に残りつづける傑作。――〈カーカス・レビュー〉

(2017年3月16日)



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