真夜中すぎ、16歳のマイクはかなりのスピードで車を飛ばしていた。今日、出かける前に夜中の12時までに帰るようにきつく言われたのだ。もう過ぎてしまったが、少しだけなら……
 そのときヘッドライトの光の中に女の子が現れた。
 危うく轢いてしまいそうになって急ブレーキを踏む。タイヤが音をたて、車は横滑りした。だが女の子はまばたきひとつせず、なにかを訴えるように両手をあげている。
 マイケルは、キャロルアンと名のるその少女を、家まで送ることになってしまった。
 だが、目的地だという家に着いた時、少女の姿はなく、車の床には白と黒のきれいなサドルシューズが残されていた。

 という由緒正しいゴーストストーリーの展開で幕をあくこの物語、でも、そんな単純な話ではありません。
 キャロルアンがいるという、十代の子どもたちのための忘れられた古い墓地を訪ねたマイケルは、そこで何人もの少年少女に取り囲まれます。

「みんなの話を聞いて。話を聞いて」
 死者たちがあらわれ、口々にマイケルに訴えた。
 最初の少女が話しはじめる。
「あなたに話を聞いてほしいの。あたしたちが死んだ日のことを」

 ジーナ、ジョニー、スコット、デイヴィッド、エヴリン、リリー、リッチ、エドガー、トレイシー……子どもたちは次々に自分たちの最期の物語を語り、そして……。

 怖くて、ぞっとするのに、どこかノスタルジックで愛おしい、不思議な読み心地。 YA文学の名手がその手腕を余すところなく発揮した、ゴーストストーリーの傑作。

(2017年3月17日)



ミステリ小説の月刊ウェブマガジン|Webミステリーズ! 東京創元社