今宵はあの書店大賞授賞式。初めてのパーティ出席とあって、成風堂書店に勤める杏子と多絵は華やいだ気分でいっぱいです。朝の店頭業務をすませ、少し早めに出発して都内の書店を見学しようとした矢先、「本屋の謎を解く名探偵」多絵のもとに福岡の書店員が訪ねてきます。書店大賞事務局に届いた、事務局を脅すような不審なFAXの謎を解いて欲しいというのです。一方その頃、中堅どころの出版社である明林書房の新人営業マン・智紀も書店員さんがたくさん集まる授賞式とあって、準備で大忙し。ところが同業の真柴に呼び出され、しぶしぶ向かった先は今日一番忙しいはずの書店大賞事務局長のところでした。そこで智紀は成風堂に持ち込まれたのと同様、謎のFAXについて相談を受けるのです。FAXの文面にはこうありました。

『だれが本を殺すのか』 犯人は君たちの中にいる。 飛梅書店

差出人の「飛梅書店」とは、実は八年前に閉店した金沢にあるお店の名前だったのです。 一体誰が、何のために閉店した書店の名前を使ってFAXを出したのか……。二人の名探偵はそれぞれ伝手を頼って捜査を開始します。ただし、タイムリミットは授賞式の幕が上がる午後七時。果たして、無事に授賞式の幕は上がるのでしょうか?!

待望の〈成風堂書店メモ〉シリーズの最新刊がいよいよ文庫化です!
出版業界が大いに盛り上がる、書店員がその年一番売りたい本を決める〈書店大賞〉授賞式が舞台とあって、杏子&多絵のコンビだけでなく、明林書房の井辻くんも奮闘します。 実はこの人気シリーズの名探偵同士は、〈出版社営業・井辻智紀の業務日誌〉シリーズでニアミスしているのです。その頃から、「いつか二人が出会って推理合戦を繰り広げるのではないか?!」という読者さんからの熱い期待に応えて(!)満を持して二人が揃って登場します。ニアミスしている作品は『平台がおまちかね』『背表紙は歌う』にそれぞれ一編ずつ収録されていますので、この物語で初めて井辻くんに出会った方はぜひチェックしてみてくださいね。
本を書くこと、売ること、そして賞の在り方。本を愛し本の現場を書き続けている大崎さんだからこそ書けるテーマがたくさん詰まった一冊です。
めまぐるしい授賞式の一日を描いた、本格書店ミステリをどうぞお楽しみください!!

(2017年2月14日)



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