Webミステリーズ! がリニューアルということで、営業部に続き校正課もコーナーを持たせてもらえることになりました。
このコーナーでは、校正者の視点で校正まわりのこと、担当した作品などについて語りたいと思います。

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担当作:『150歳の依頼人』感想
『150歳の依頼人』E・J・コッパーマン/藤井美佐子訳

念願の海辺のゲストハウスを開業させたシングルマザーのアリソン。10歳の娘との新しい生活に張り切っていたら、いきなり事件が発生して……。ほのぼのコージー・ミステリ。

http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488259044

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シリーズ2作目の本書は、いよいよ初めての宿泊客が到着する、というところから始まります。

シングルマザーでありながら、海辺のリゾート地に建つヴィクトリア様式の屋敷を購入、自分でリフォームしてゲストハウスを開業する、というある意味全能感に溢れたサクセスストーリーですが、この主人公・アリソンのキャラの売りは、料理が全くできない(しない)というところにあるのではないかと思いました。

10歳の子供をもつ母親が食事を作らないなんてありえない!と、当然はいる批判をものともせず、子どもの養育について一家言あるところが笑える、というか、頑張りきれない女性の共感を呼ぶところと思います。彼女は何事も無理せず自分に出来るところで勝負する、それでスルスル道が開けていくんですね。

今回、リアリティ番組の撮影がアリソンのゲストハウスで行われますが、「テラスハウス」のやらせ疑惑を蹴飛ばすような撮影裏話も読みどころ。でもなにより、アリスンが娘に聞かせたくない言葉をすべて“偏頭痛”に置き換えているくだりが最高に面白かったです。

ぜひお手にとってください!
(C)


(2016年12月27日)



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