あらゆる書物を所蔵するという、幻の〈鞄図書館〉。貸出期間は一年。使い込まれた風合いの小さな姿のその中に、無限の世界を秘めた喋る鞄と、トレンチコートに身を包み、寡黙に仕事に打ち込む司書。そんな二人でつくる〈鞄図書館〉が世界を巡り、出会った人たちと繰り広げる温かな交流を描くハートウォーミングコミックの第3弾が登場です。

2巻で日本を訪れた司書さんと鞄ですが、今回の鞄図書館は日本を旅立ち、ふたたび世界各国を飛び回ります。
そんな二人の前に現れる利用者は、返却を拒んだり、又貸ししてしまったり、はたまた人間外のものであったり。一筋縄ではいきません。それでも司書さんたちは旅を続けます。一冊の本で救われる人がいる限り。

『鞄図書館』の読みどころのひとつに、実在の本が登場するところが挙げられます。
今作で登場する本を少しご紹介します。

・安楽椅子探偵物として評価の高い《黒後家蜘蛛の会》シリーズも執筆したアイザック・アシモフによる、ロボットSFの傑作『わたしはロボット』。(25冊目)。
・「魔女」と呼ばれた異色作家、シャーリイ・ジャクスンの代表長編であるゴシックロマン『ずっとお城で暮らしてる』(28冊目)。
・多重解決ものの嚆矢といえるマスターピース、アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』(30冊目後半)。

これらの本がどのような状況で、どんな人に貸し出されるのか、ぜひ読んで確かめてみてください。
一話あたりのページがボリュームアップし、読み応えもぐんとアップした『鞄図書館』。既刊を既にお読みの方も、はじめて読む方も、年末年始のお供に3冊まとめていかがでしょうか?

(2016年12月15日)



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