「新しい“本の現場”を書いてみませんか」と大崎さんにお願いをしたのは、2015年春でした。

これまで『配達あかずきん』をはじめとする〈成風堂書店事件メモ〉シリーズで新刊書店を、『平台がおまちかね』などの〈出版社営業・井辻智紀の業務日誌〉シリーズでは出版社の新人営業マンの活躍など、本に携わる仕事を真摯に丁寧に描いてきた大崎さん。デビュー10周年を迎えるにあたり、新しい「本の現場」を読みたいと思ったのです。舞台をどこに設定するか、打ち合わせを重ねる中で「移動図書館の話はどうかしら」と提案いただきました。どんと佇む図書館ではなく、利用者の住まいの近くまで身軽に本を届けるちょっと変わった図書館を、大崎さんが描かれたらどんなお話になるんだろう。わくわくして、すぐに連載の準備をお願いしました。

連載の前に、横浜市立図書館にご協力いただきました。移動図書館・はまかぜ号を見せてもらったのです。中央図書館ではまかぜ号の出発を見守ったり、貸出業務が行われている巡回先にくっついて行ったり……。現場で実際に働く方からの「こういうとき嬉しい」「あれが困った」などのエピソードは新しい発見ばかり。取材日はあいにくの雨天でしたが、そんなことで出発しない、なんてことはありません。本を借りに返しに、待っている人がたくさんいるのですから。この貴重な経験は本文にぞんぶんに活かされていますので、どうぞお楽しみに。

そういった取材活動やキャラクター設定を固め、同年の秋には『ミステリーズ!』誌上で連載がスタートしました。
三千冊の本と六十五歳の新人運転手・テルさんと図書館司書・ウメちゃんの年の差四十のでこぼこコンビが乗り込む本バスめぐりん号。巡回先で二人と一台を待ち受けるのは、利用者とふしぎな謎の数々で……。本でつながる想いをのせて、めぐりんは今日も走る。こうしてできあがった移動図書館の物語は、心あたたまるミステリとなりました。

大崎梢さんは2016年、デビュー10周年を迎えました。それを記念し、文藝春秋、光文社、東京創元社(作品刊行順)の三社合同で、「大崎梢いつのまにやらデビュー10周年記念キャンペーン」を開催中です。
ここでしか読めない大崎梢インタビューが掲載された特製ペーパーを、『スクープのたまご』『よっつ屋根の下』『本バスめぐりん。』それぞれに封入しています。もちろんインタビューの内容も三つすべて異なります!

また、『本バスめぐりん。』刊行を記念して、紀伊國屋書店横浜店様でサイン会が開催されます。ぜひお立ち寄りください!

日時:2016年12月3日(土) 14:00~15:30
開場:紀伊國屋書店横浜店 店内特設会場
220-8510 神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店7F
TEL 045-450-5901

詳細については書店のサイトをご覧ください。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Yokohama-Store/20161104100000.html

(2016年10月6日)



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