今月の本の話題

2016.11.07

『ハリー・クバート事件』が文庫化されました

 スイス人の青年作家・ジョエル・ディケールが、世界のミステリ・ファンを虜にしたあの『ハリー・クバート事件』が文庫になりました。
ジョエル・ディケールはとんでもないストーリーテラーというのが、まずはじめの私の感想でした。
 私の考えるストーリー・テラーの条件は、その本を持ってラッシュ時の電車に乗り込み、一時間近い車中で(ワタシ、遠距離通勤なのです)座れなくても問題ない……というものなのですが、本書はまさにこれです。
 長距離旅行でえんえん立っていても大丈夫かもしれません。
それほど読ませる……面白くて、座れなくても苦にならない……。そういう時は、立っていても具合が悪くなったりしないのですよ、これが。
 作った本人だから、そんなことを言うのだ、とお思いでしょうが、これが本当なのです。騙されたと思って、お読みになってみてください。
 極上のエンタメです。
 映画にしたら絶対面白い……と思い続けています。ロン・ハワード監督で計画されているという情報はあったのですが、いっこうに実現しません。
 待ち望むファンも多いということなのでしょう。とんでもない、偽トレイラーがネット上にアップされる始末。
 一瞬「えっ! 本当! すごい!」と舞い上がったら、なんとファンがあれこれ切り貼りして作ったもののようで、ショボン。
 見事なイタズラだけど、遠い日本で編集者が、舞い上がり、直後に奈落の底に突き落とされ泣いているということを知ってほしい……。
 いや、まあ見事なトレイラーですよ。
 「Truth about Harry Quebert affair , movie
で検索すると、YouTube で見られます。一見の価値はあります。
 映画マニアの方なら、きっと、あれとこれとそれをつぎはぎしたね、とすぐわかるのでしょうけれど。
 映画話はさておき、遠距離通勤のお伴か、週末の読書に断然お薦めです。
 とにかく、読み出したら眠れませんので……。翌日、仕事があるとまずいということは、お話ししておきます。

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世界的ベストセラーとなるべきあらゆる要素をそなえた作品 
                ――「ディー・ツァイト」

読み終えてしばらくは、その魔力から抜け出せなかった。
          ――「ラ・バングァルディア」

驚くべき展開、ミスリードとどんでん返しに読者は翻弄される。
                     ――「リール」

恐るべき出来……ノーマン・メイラーが殺人で告発され、カポーティとドミニク・ダンが事件の真相をまとめ上げたとしたら、こうなるのではなかろうか? いや、それ以上に面白い!
             ――「ニューヨーク・タイムズ」


(2016年10月6日)



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