9月末に刊行されたエドワード・ケアリーの〈アイアマンガー三部作1〉『堆塵館』ですが、刊行直後からたいへんな評判を呼んでいます。

 塵で財をなしたアイアマンガー一族、そのひとりであるクロッドと、屋敷の外から来たメイド、ルーシーの運命の出会い。物の声を聞くことのできる不思議な能力を持つ少年クロッドが歩む道は?
 著者自身が描いた独特の雰囲気をもつ挿絵も、ひと目見たら忘れることのできないほど魅力的です。
 すでに読んだ方からは“面白かった”“凄い”“待ってました”“早く続きが読みたい”との声が続々いただいています。

 一足先にゲラ版でお読みいただいた読者モニターの皆様の感想をここでご紹介しますので、是非お読みください。

*30代 女性
「この物語を待っていた」
 この壮大な物語を読み終えて、全身に受けた衝撃を、身体の内部に湧き起こった感情を、ひとことで言うならば、こうなる。そしてこれは、本好きの人なら必ず共感してくれるに違いない。なぜなら『堆塵館』は、本物の物語だからだ。
 物語に本物も偽物もないといえばないけれど、私が考える本物の物語とは、これまでに誰も読んだことがない物語であり、読んだなら自分の世界が全部物語へ引き寄せられるほど心を揺さぶられる、そんな力を持つ物語だ。

*60代 男性
 ゴミ山という舞台で、底辺の人々が描かれるのはあたりまえですが、そこに奇怪なゴミ屋敷を持ってきて貴族的で奇矯な人々を配するというところが素晴らしい。しかも少々不細工で可愛げの無い主人公カップルに何故か愛着を感じてしまう巧みな語り口、構成。挿絵も何だか不気味で良いです。

 人が物になるという奇病、それはゴミ山が原因なのか。ゴミ山の嵐、「結集」、それらは何故起こり、アイアマンガーの血統とどう関わっているのか。何故祖父は無敵なのか。そして、クロッドとルーシーはどうなってしまうのか……。

*50代 女性
 ページをめくる毎に物語の背景と一族の秘密が、彫刻家でもあるという作者の描く独特の挿絵と相まって、不気味に、スリリングに、ヒタヒタと、少しずつ明らかになっていく。
 これってもしかしてホラーなの?いやいややっぱりファンタジー?そうかとおもえばミステリで、一風変わったラブストーリーのようでもある。だがまてよ、あるいはこれ、ディストピア小説なのかもしれない?!
 冒頭から沢山の「?」がつきまとう物語は、読み進めれば進めるほど、その世界にずぶずぶとはまってしまって容易には抜け出せない。けれどもこれは三部作、まだまだ物語の始まりに過ぎない。今から続きが待ち遠しく、ずっと手元に置いておきたくなって、せっかくゲラ版モニターに当選したのにやっぱり本が欲しくてたまらなくなった。

*40代 女性
 作品中程で暴かれるこの世界の設定に戦慄した。これに風の谷のナウシカ、銀河鉄道999、交響詩篇エウレカセブンを思い出した読者は私だけでは無いだろう。フルアニメーションで見たい世界だ。

 幼いながらも運命的な愛に繋がれた主人公とヒロイン、ともに行動力があり生き生きしていて魅力的。それゆえの幕切れの残酷さよ! 愛の成就と引き換えにこの世界、アイアマンガーは崩壊するのか?そのメロドラマ性にも引き込まれる。

*30代 女性
 読み始めから、この物語が持つ異様さに圧倒されました。独特な設定に、変人ぞろいの登場人物。なにもかもがヘンテコすぎて、いったいどんな話になるのか想像がつきませんでした。  なのに、読み進めるうちにぐいぐい引き込まれ、アイアマンガー一族の変人ぶりから目が離せなくなり、ついには彼らのことがすっかり好きになっていたのだから不思議です。特に気に入ったのはルーシーで、誰に向かっても物怖じしないところや、ズバズバと言ってのけるところがすがすがしく感じられました。ところどころにちりばめられた奇妙なユーモアや、中盤以降のスピード感ある展開もよかったです。
 ルビが多めなので頑張れば子供でも読めそうですが、もし自分が子供のときに読んでいたら、きっと衝撃を受けたことでしょう。それくらい、唯一無二の作風だと思います。

*50代 男性
 まともな人が登場しない不思議な館、ごみだらけ……。ものの名前が聞こえる主人公の男の子もつれてこられた女の子も全然美形じゃないのに、ヒロイックな冒険ものになっていく。ゴミと悪意から築き上げた一族を守る運命を託された少年と不細工で不幸だが、ちょっとやさしくておてんばな少女。章ごとのイラストがまた効果を出している。

*40代 女性
 面白かったです!夢中で読みました。
 各章の量がちょうどよくて中断しやすく読みやすかったです。
 これでもかと詰め込まれた濃密なヴィクトリア時代の空気を味わえました。
 使用人とは家具のようなものだと資料で読んだ事がありますが、使用人が家具のように自我を失って、主人公は家具の声を聞き寄り添う、双方の距離が縮まると混沌が始まる流れの見せ方が面白かったです。
 階級間の認識を破壊する話に読めました。
 クロッドがあくまでも礼儀正しいお坊ちゃんとして行動して、ルーシーが手癖の悪く罪悪感の無い娘なのも良かったです。

 最高に盛り上がったところで、本が終わってしまって、本当に、ひどいです!早く続きが読みたいので、本を予約してきました。続刊をお待ちしています。

*30代 女性
 最高に面白かったです!はじめはこの奇妙な一族の奇妙な物語を外の世界からこっそり覗いているような感じでしたが、あの独特の詳細な物と人物への描写にいつしか引き込まれ、イメージの洪水が押し寄せてきて、クロッドやルーシーとともに嵐の最中にいるようでした。魅惑的な各章のサブタイトル、ケアリー自身の手による挿絵も絶妙でした。しかもあんなところで一部が終わってしまうなんて!! 続きが今から楽しみで仕方ありません。エンデのファンタジーが好きな方などにも読んで欲しい作品。

*30代 女性
 エドワード・ケアリーさんファンになりました! 8ページで「あ、これ好きだ」って確信しました。ロンドンとか巨大な屋敷とか一族とか少年と少女とか一生涯肌身離さず持っていなければならない品とか!好きにならないわけがないのです!
 最初は「ライラの冒険」みたいに生まれた時からの特別なもの素敵! 憧れるなぁ思っていたのですがお話としては大好物ですがこんな関係はお断りです!。
 読んでいくうちにパワフルなルーシーが大好きになりました。弱弱しいクロッドも逞しくなって格好良く登場! 二人の夜の密会のシーンが好きです。

*50代 女性
 多く挿入されているイラストに目が奪われました。
 多くの登場人物の奇怪な肖像画を見ながら、あらゆるガジェットの奇怪でどこかかわいくて不気味な閉じ込められた世界もずっと冒険したいような、まだ語られていない不思議を知らなければいけない、そんな気持ちのまざった2巻へ続く! なラストページ。
 物、たちのモンスター、アルチンボルトの野菜でできた人の顔を屋根裏中の芥で作ったみたいで想像するのが楽しかったです
 ふたりどうなっちゃったんだ!?

*30代 男性
 読みながら、ジャン=ピエール・ジュネの映画や、シルヴァン・ショメのアニメを思い出した。彼らが映像化してくれたらぴったりな気のする、ユーモラスでちょっとグロテスクでリリカルな奇想に溢れていながら、正調イギリス小説の伝統に忠実な堅牢な構成でとても読みやすい。
 アイアマンガー一族の住む上の世界、名も無き使用人たちの住む下の世界、それぞれを別視点で交互に描いて(時々他の視点も入れながら)重層性を出すのは常套かもしれないけれど、主⇔使用人、人⇔モノ、という関係が狂騒のなかで徐々に溶け崩れていく感じや、堆塵館というゴーメンガースト城的に巨大な空間を描くには、この上なく適した方法だったのではないかと。
 迷宮のように宏壮な堆塵館、恋人たち、一族を取り巻く謎、活劇、死、悪意……

*50代 女性
 いやあ、このケアリーランドったら!
 みそっかすのクロッドとメイドのルーシーの語りで進む、摩訶不思議な塵の山の世界。
 広い屋敷の中だけの狭い世界で起こるあれこれを、ケアリーらしいルールと視点で書いてます。
 うーん、まるで天皇家のお徴のような登場人物ひとりひとりに与えられる、モノ。
 それはガラクタでしかないのに、まるで宝物のように描かれています。
 そのモノの声が聞こえてしまうクロッド。逆に聞こえないモノのほうが恐ろしく感じられてしまいます。
 前二作も建物に命があるようでしたが、この物語もまたそういうところがあります。
 ひととモノにまつわるアイアマンガー家の話を、ずっと読んでいたいです。あ~続きが気になる!


読者モニターの皆様、熱いコメントありがとうございました! コメントは一部抜粋して紹介させていただきました。他にも沢山のご感想をいただいていますが、ご紹介しきれず申し訳ありません。今後宣伝などに使わせていただきます。

(2016年10月6日)



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