1986年ノードコステル島。
 その夜は大潮だった。だがまだ潮は引いている。
 砂浜の三つの人影は穴を掘っていた。ちょうど人ひとりが頭だけ出してすっぽり入るくらいの穴だ。四人目の人物――少し離れたところに手を縛られたまま、立ちつくしている女――のための穴。
 その若い女性は頭だけ外に出して、砂浜に生きたまま埋められた。ひとつめの波が流れこみ、長い黒髪がゆっくり水を含んでいく。そして波が容赦なく身動きのできない女性を襲った……。

 2011年夏、ストックホルム。
 警察大学三年生のオリヴィアは、夏休みの課題として選択した二十数年前のノードコステル島の女性殺害事件を調べていた。
 実は警察官だった彼女の亡き父が、かつてその事件を担当していたのだ。殺されたのは若い妊婦、犯人は見つからず、容疑者すら挙がっていない。オリヴィアは話を聞こうと当時父親の同僚だったという男を探したが、心を病んで警察を辞めたというその男の足取りはまったくつかめなかった。

 一方ストックホルムでは、ホームレスが何者かに襲われ、執拗に暴行される事件が続いていた。どうやら生活費を稼ぐために路上で雑誌を売っている販売員が狙われているらしい。暴行の模様は動画に撮られ、ネット上で公開されている。ネットで公開するために暴行しているのだろうか?

 驚いたことにオリヴィアがさがしていた行方不明の元捜査官は、ホームレスのなかにいた。
 過去を掘り起こしていくオリヴィアの行動が、意外な関係者たちを揺さぶる。一流企業の取締役、政治家、エスコート会社の経営者……。

 そしてオリヴィア最後にたどりついた真相は、彼女自身が予想だにしないものだった。

 マルティン・ベック・シリーズのシナリオを手がけた人気脚本家コンビが放つ衝撃のミステリ。

(2016年10月6日)



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