今月の本の話題

2016.09.06

火災調査官とポンプ車小隊長のコンビが追う、都内連続放火事件の謎 福田和代 『火災調査官』[2016年9月]

火災調査官とは、火災の原因を調べる消防職員のことである。東京消防庁消防本部予防部調査課に勤める東は、有能な火災調査官だが、実は内心火に魅せられている。ある日彼は、目黒区柿の木坂の空き家で起きた放火の現場に向かう。消火活動にあたったのは、東の高校時代の先輩であり、現在は目黒消防署八雲出張所のポンプ車小隊長を務める白木。そこで東は、犯人の遺留物と思しき、ダ・ヴィンチ『岩窟の聖母』の一部を模写した絵を見せられる。そしてその事件を皮切りに、都内で放火事件が頻発。現場にはなぜか同じ絵が残されていた……。

* * *

『TOKYO BLACKOUT』で電力会社の社員、〈バー・スクウェア〉シリーズで薬物課の刑事たちと、あらゆる職業の人々が活躍する作品を書いてきた福田和代さん。待望の新作長編は、東京消防庁の火災調査官を主役とした渾身のミステリです。

火災調査官の仕事は、火災の原因を調べること。現場を検証し、何があったかを丹念に調べ上げる作業は警察や探偵の仕事とも通じるかもしれません。本書では、綿密な取材に裏打ちされた調査官の仕事ぶりが描かれています。
そんなお仕事小説としても楽しめる一方で、もちろんミステリの面白さも存分に描かれています。ダ・ヴィンチの模写絵は、なぜ放火現場に必ず残されるのか? 事件を追うと浮かび上がる、放火の被害者たちを繋ぐ過去の出来事とは?

秘かに火を愛する火災調査官と、彼を心配しサポートするポンプ車小隊長の、軽妙なやり取りも見逃せません。読み応え抜群のミステリ長編を、どうぞお見逃しなく。

(2016年9月6日)



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