高純度謎解き本格
誰が悪趣味な美女を殺したか?
ウィリング博士を導く意外な手がかり

シリーズ初期の傑作ミステリ



ヘレン・マクロイの新刊『ささやく真実』は第三長編The Deadly Truth(1941)の翻訳で、今回が本邦初訳となります。本作の特徴はずばり、マクロイ作品の中でも指折りの、謎解きに特化した本格ミステリであることです。

事件が起きるのはニューヨーク州郊外ロングアイランドの海辺にある小さな邸宅。家の主人である美貌の資産家クローディアは、悪趣味ないたずらで周囲に騒ぎをもたらすのを何よりの楽しみとする困った女性です。彼女が今回思いついたのは、強力な自白効果のある実験段階の新薬をパーティーに出す飲みものに混ぜ、宴を暴露大会に変えることでした。

クローディアのねらいは当たり、出席した人々は次々に胸に秘めた真実をぶちまけていきます。……しかし、それは必ずしも彼女の考えていたような内容ばかりではありませんでした。そのうえ、クローディアがいっさい考慮していなかったできごとが、夜の終わりに起こります。ほかならぬ彼女自身が、何者かに殺害されてしまうのです……!

クローディアが絶命する瞬間に立ち会い、死体の発見者となったのが、近くに住む精神科医ベイジル・ウィリング博士でした。ウィリング博士はそのまま地元警察に協力し、事件の捜査に関わっていきます。

当夜現場に居合わせた人々=容疑者はわずか6人。単なる勘頼みならば、犯人を当てるのは決して難しくない人数です。しかし、随所にちりばめられた手がかりを拾いあげ、筋道立てて犯人を推理するとなると……これはとびきりの難問に変わります。マクロイの仕掛けを読みきり、伏線をさぐりあてて、みごと真犯人を指摘できるか。「われこそは」というかたは、ぜひ挑戦してみてください。

ヘレン・マクロイ『ささやく真実』は8月31日発売予定です。


悪趣味ないたずらで、周囲に騒動をもたらす美女クローディア。彼女は知人の研究室から盗みだした強力な自白剤を、自宅のパーティーで飲みものに混ぜてふるまい、宴を暴露大会に変えてしまう。その代償か、夜の終わりに彼女は何者かに殺害された……! 精神科医ウィリング博士が、意外な手がかりをもとに指摘する真犯人は? マクロイ屈指の謎解き純度を誇る、傑作本格ミステリ。

なお、マクロイの翻訳はまだ続きます。次回はひとつさかのぼって第二長編The Man in the Moonlight(1940)を2017年に刊行します。大学内で起きた連続殺人をめぐる本格ミステリにして、ウィリング博士とギゼラの出会いの物語、どうぞお楽しみに。


(2016年8月8日)




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