前妻、現夫人、愛人、婚約者。
男は今夜、このなかの一人を殺さねばならない――

「被害者捜し」の果ての衝撃!
“回想の達人”マガーによる傑作ミステリ



「犯人」を捜すのではなく、「被害者」「探偵」「目撃者」等を探す……斬新な設定で一世を風靡した作家、パット・マガーの傑作ミステリが装いも新たによみがえります。

今回版を新たにし、新カバー・新解説となる『四人の女』はマガーが1950年に発表した長編第5作です。主要登場人物はたったの五人。人気絶頂のコラムニスト・ラリー(いけすかない男)と、その前妻、現夫人、愛人、フィアンセ……彼を取り巻く四人の女性だけです。

物語は深夜のニューヨークで墜落死体が発見されるところから始まり、すぐさま時間が巻き戻ります。その夜、ラリーはビルの上階にある自らの高級アパートメントに、四人の女性全員を招いてディナー・パーティをひらいていました。その真の目的は、彼女たちのうち一人を殺害することだったのです。彼がどうしても殺さねばならない切実な理由のある、「被害者」とは誰だったのか……?

このように、設定はユニークではありますが非常にシンプル。読者はラリーと女たちのパーティの模様、かつて彼が彼女たちと過ごした日々の回想を通じ、動機を探っていくことになります。この作品がすごいのは、「被害者捜し」の趣向の面白さに加えて、最後まで読んだときに思いも寄らない方向から心を揺さぶられること。さまざまな「読み」のできる、まさに傑作なのです。

……そのあたりのことは、今回の新版化にあわせて書きおろされた、深緑野分先生の「解説」でも触れられています。購入を迷っているかたは、まずこの解説にだけでも眼を通してみてください。

『四人の女』は7月28日発売予定です。


前妻、現夫人、愛人、そしてフィアンセ――人気絶頂のコラムニスト、ラリーを取り巻く四人の女性。彼はひそかに自宅バルコニーの手摺(てすり)に細工をし、四人をディナー・パーティに招いた。ラリーには、そのなかの一人を殺さねばならない切実な理由があったのだ……。一作ごとに趣向を凝らす才人マガーが、犯人ならぬ「被害者捜し」の新手に挑んだ、いつまでも色あせない傑作ミステリ。


(2016年7月5日)




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