『犯罪』で2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いたフェルディナント・フォン・シーラッハ。その後も『罪悪』『コリーニ事件』『禁忌』『カールの降誕祭(クリスマス)』を発表し、各国の読書界を席巻してきた著者が発表した最新作『テロ』は、なんとふたとおりの結末が用意された驚きの法廷劇です!

2013年7月26日、ドイツ上空で旅客機がハイジャックされました。テロリストが、サッカースタジアムに旅客機を墜落させ7万人の観客を殺害しようと目論んだのです。しかし緊急発進した空軍少佐が独断で旅客機を撃墜します。乗客164人を殺して7万人を救った彼は英雄か? 犯罪者か? 結論は一般人が審議に参加する参審裁判所に委ねられられることになりました。検察官の論告、弁護人の最終弁論ののち、最後に有罪と無罪、ふたとおりの判決が用意されています。どちらの結末を選ぶのかは、それまで本書を読んできた「あなた」次第なのです。

有罪判決と無罪判決、どちらから読むのかをゆっくり考えてみてください。読む人それぞれの価値観を問う傑作です。

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本書は法廷劇であり、戯曲として執筆されているので実際の劇として上演することができます。検察官と弁護人がそれぞれの意見を述べたあとで、有罪か無罪かを観客の投票によって決定します。多数決で多いほうの結末のみが上演されるという体裁になっています。

ドイツ本国では前代未聞、30箇所以上の劇場で上演されており、しかもすべて別演出で俳優も違っています。ドイツだけでなくオーストリアなどドイツ語圏にも進出しており、さらにテルアビブ、カラカス、ブダペスト、コペンハーゲンなどでも上演が決定した模様。上演回数は増え続けています。

こちらのサイトで、上演されたそれぞれの劇場の公演日などの詳細とともに、どちらの判決が選ばれたのかを知ることができます。ちなみに、今のところ約60%が「無罪判決」に至ったようです。

http://terror.theater/

さらに、日本でも朗読劇として上演されることが決定しています。シーラッハ作品に惚れこんだ名優・橋爪功氏と、国内外で大活躍するピアニスト・小曽根真氏の共演により、2016年8月に「裁判劇 Terror(テロ)」として東京・日経ホール、兵庫・兵庫県立芸術文化センターで上演されます。

http://mystery.co.jp/special/terror

『テロ』は7月11日発売です! 読書界だけでなく、さまざまな分野の人々を魅了しつづけるシーラッハ・ワールド。その真骨頂をどうぞお楽しみください。

(2016年7月5日)



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