今月の本の話題

2016.05.09

土曜日だけ営業する不思議なカフェでの安楽椅子探偵譚 内山純『土曜はカフェ・チボリで』[2016年5月]

 ビリヤード店を舞台に推理合戦が繰り広げられる連作短編集『B(ビリヤード)ハナブサへようこそ』で第24回鮎川哲也賞を受賞した著者による、新たな安楽椅子探偵譚の誕生です。

噴水があり桜並木が続く広大な公園のような敷地に佇む〈カフェ・チボリ〉が今回のお話の舞台です。児童書の出版社に勤め編集者として奮闘している香衣は、とあるきっかけでチボリを訪れます。お店のあたたかいおもてなしと美味しく珍しいデンマーク料理にすっかり魅了され、オープンしたてのお店の「一番目のお客様」となった香衣は常連客となりました。ただしこのチボリ、店主は高校生。平日は高校があるため営業するは土曜日だけ。一風変わったこの店には香衣のような常連客がつき、彼らは食後のデザート代わりに身の回りで起こった謎について語り始めるのでした。それらはいずれも『マッチ売りの少女』『人魚姫』などアンデルセン童話を彷彿とさせる出来事で――。
主人公の「香衣」という名前もあの名作を彷彿とさせる名前ですよね。

小気味よく語られる身の回りの不思議な出来事や想い出の中の心残りは、「皆さんヒュッゲの時間です」という言葉と共にレンがマッチを擦ると、瞬く間に解かれてゆくのでした。「ヒュッゲ」とはデンマーク語で“くつろぎ、おもてなし、居心地のよい雰囲気”といった意味を持ち、チボリのコンセプトでもあります。店主のレンはお客さまにとってチボリがヒュッゲになるようにと心を砕くのですが……。

土曜日だけ営業する不思議なカフェでの安楽椅子探偵譚をどうぞご堪能ください。

(2016年5月9日)



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