今月の本の話題

2016.05.09

ルーフォック・オルメスをご存じですか? カミ『ルーフォック・オルメスの冒険』[2016年5月]

 ルーフォック・オルメスとはいかなる人物でしょうか?
 ルーフォックは、ちょっとイカレタ、という感じでしょうか。そしてオルメスはホームズのフランス読み。
 というわけで『ルーフォック・オルメスの冒険』『シャーロック・ホームズの冒険』のフランス式パロディなのです。
 しかし、これが単なるパロディというようななまなかのものではありません。とにかく変、ヘンテコの極みなのであります。
 そもそも事件が変! 探偵も変! 推理も変! なのです。
 目が覚めたら「骸骨が抜き取られてしまっていた!」とオルメスのもとに駆け込んで来た男がいれば、首つり自殺をして確かにぶらさがっているのに、別の場所で生きているという男もいる。そして巨大なインク壺のなかに閉じ込められた男たちノ正体は……。とにかく奇妙な事件ばかり。そして事件の謎を解くオルメスの名推理ときたら!
 
 これは、名探偵ホームズ・ファンなら、即ちおおかたのミステリ・ファンならば、知っておかなくてはならないトンデモ名探偵の物語なのです。
 いえいえ、ホームズもミステリも知らない人でも、これを読めば、おなかを抱えて笑うしかない、そんなあきれた、超弩級の文字通りの傑作ミステリなのであります。

 本書は、1926年に本国フランスで刊行された短篇集 "Les Aventures de Loufock Holmes"の全訳です。短篇が34篇。34篇も揃いもそろってヘンテコな事件と推理を考えた作家、カミ(1884~1958)とは、フランスの作家で本名はピエール・ルイ・アドリアン・シャルル・アンリ・カミ。父親はセールスマン。
 少年時代は闘牛士に憧れたカミでしたが、その後、詩人を目指し、さらに俳優を志望したが挫折、ユーモア作家となったそうです。
 チャップリンは、彼を最高のユーモア作家と賛辞を贈り、詩人のジャック・プレヴェールは、「カミふう Camisard」という言葉を提案したといいます。
 というわけで、とんでもないユーモア・センス横溢のこの短篇集を、まあお読みください。ルーフォックの名に納得してくださることでしょう。
 翻訳は、「クリク・ロボット」「三銃士の息子」で読者をうならせた、高野優さんです。今回もこのカミの真骨頂を名調子で日本の読者に届けてくださいました。時々添えられた訳者言にも、にやりとさせられること間違いなしです。
 お楽しみください!
(2016年5月9日)



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