あの強烈に不思議な猫のゴードンが登場する『世界が終わるわけではなく』で、アトキンソン・ワールドに引き込まれた方も多かったはず。
 2014年の秋、そのケイト・アトキンソンによるミステリ『探偵ブロディの事件ファイル』を刊行しましたが、ただいま第二弾を準備中です。
 今回は、そのミステリ度が大幅にアップ。それでいてまさにアトキンソン・ワールドの住人たる登場人物たちが生き生きと動き回り、様々な出来事、人々が連関している構造も見事。
 考えてみれば、人々がつながり、その人々の行動があちこちで連関し、あそこでの彼の行動が、ここでのこの事件にしっかり結びついている……という構造は、ミステリには欠かせない要素なのでした。つまり、アトキンソンはミステリを書くべくして書いたのだと言っていいでしょう。

 女優である(決して大女優ではありませんが、演劇活動をしているので女優、というくらいの人物です)恋人ジュリアも参加している、エディンバラの演劇フェスティバルにやって来た探偵ジャクソン・ブロディが、とんでもない事件に巻き込まれるというのが本書です。
 2台の車の衝突事故とその後の二人の運転手のもめ事、(ひとりがバットを持ち出し、相手を襲撃しようとしたのだ!)と、道ばたの通りがかりの男がブリーフケースを投げてそれを阻止したのを目撃したジャクソン・ブロディだったが、その後に観光で訪れた島でなんと今度は若い娘の溺死体を発見する。しかし、その死体は消えてしまう。
 そして殺人事件がさらにいくつか……。
 これらの謎に満ちた事件が結びつき、とんでもなくこんがらがったことになっていくのです。傑作!

海外の書評より

◆サイコーにスリリングで癖になりそう……チャンドラーがシナリオを書いてリチャード・カーティスが映画を撮って、お互いに刺激しあって1+1が2以上になったような……。――タイムズ

◆アトキンソンの最高傑作。逃すべからず。――サンデイ・エクスプレス

◆ひとつの物語が別の物語の中に入れ子になっていて、また……まるで登場人物のマーティンが持っていたマトリョーシカのよう。――スペクテーター

◆強烈なサスペンス、そして疾走感……アドレナリンと目から鼻にぬけるユーモア。――フィナンシャルタイムズ

(2016年5月9日)



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