とある地方都市で、SNSコミュニティ『現代詩人卵の会』のオフ会が開かれた。別れ際、九人の参加者は「詩を書いて生きる志をもって、それぞれが創作に励み、十年後に詩人として再会しよう」と約束を交わす。しかし約束の日、ほぼ半数が自殺などの不審死を遂げていた。細々と創作を続けながらも、詩を書いて生きていくことに疑問を抱き始めていた僕は、彼らの死にまつわる事情を探り始めるが……。孤独な探偵が、創作に取り憑かれた人々の生きた軌跡を辿り、見た光景とは? 気鋭が描く謎と祈りの物語。

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本書担当編集者である私が紅玉さんとお会いしたのは、2014年初夏のことでした。執筆依頼をした元弊社代表取締役の戸川安宣と共に、担当としてご挨拶した際に「可愛らしさと共に、とてつもないパワフルさを感じる方だな」と思ったことを良く覚えています。今まで著作を好んで読んでいましたので、その印象通りだなとも。

しかし、その後いただいた『現代詩人探偵』初稿を拝読した時は、とても驚きました。生きることと創作の両立に思い悩む主人公。創作に葛藤し死を選んだ、詩人仲間たちの壮絶な最期。辛くても存在理由である創作をやめられない、創作者の業を深く抉った描写は、これまでの著作とはまったく異なる、執筆の覚悟や凄味を感じたからです。
詩人たちの最期を知ることで傷つく「僕」の姿は、とても弱く、それでいて何があっても真実を追い求める強さがありました。真相と向き合った彼は何を得て、何を失ったのか。ラストシーンで描かれた、溢れ出す悲しみとひとつの決意に触れた時には、涙が零れてしまいました。

本書を手に取る前に、ぜひ紅玉さんが作品に込めた想いを、こちらのインタビューからお受け取りください。そして祈りにも似た渾身のミステリを、どうか見届けてください。

(2016年3月7日)


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