第一次世界大戦が終わった数年後、
ひと組の夫婦が上流階級の屋敷に越してきた。

それが悲劇の、すべてのはじまり。



〈このミステリーがすごい!〉〈週刊文春〉〈IN☆POCKET〉など、名だたるミステリランキングで第1位に輝き(このミスは二作連続!)、本国イギリスでもサマセット・モーム賞や英国推理作家協会(CWA)最優秀長編歴史ミステリ賞(ヒストリカル・ダガー)を受賞、ブッカー賞最終候補に三作連続で選出されるなど、そうそうたる経歴を持つ花形作家サラ・ウォーターズ。彼女が2014年に発表した最新長編がついにお目見えします。タイトルは『黄昏の彼女たち』The Paying Guests

一作ごとに時代や舞台を変えてきたウォーターズが今回選んだのは、1922年、第一次世界大戦が終わって少し経ったロンドンとその近郊。ある上流階級のお屋敷に、ひと組の下宿人がやってくるところから物語は始まります。

主人公のフランシスは上流階級の令嬢でしたが、戦争とその後の混乱で兄弟と父を喪い、家計を維持するため、広い屋敷に下宿人を置くことを余儀なくされます。募集に応じてやってきたのは、レナードとリリアンのバーバー夫妻。自分より年下の、労働者階級の人間とひとつ屋根の下でともに暮らすことに、フランシスとその母は戸惑いを覚えます。

そんな戸惑いの中、フランシスはしだいに夫妻の妻のほう……リリアンと交流を深めていきます。やがて、フランシスとリリアンの関係は、単なる家主と下宿人の妻といった通りいっぺんのものから、いつしか禁断の恋へと変貌していき……。ふたりの距離が縮まっていくさまを、ウォーターズは丹念な筆致でじっくり描いていきますが、そこは彼女のこと、のちの悲劇につながる要素を、あちらこちらにちりばめています。

本書はミステリですので、多くは語れませんが、緊張が極限まで高まったところで事件――殺人事件!――が起き、そこからは怒濤の展開が待っている……とだけは申し上げてもよいでしょう。ふたつの世界大戦のはざまの時代を紙上によみがえらせ、その時代にしか起こりえなかった犯罪とその行方を、鮮やかに描き出す、ウォーターズの名人芸をご堪能ください。

『黄昏の彼女たち』は1月29日発売予定です。


1922年、ロンドン近郊。戦争とその後の混乱で兄弟と父を喪い、広い屋敷に母とふたりで暮らすフランシスは生計のため下宿人を置くことにする。募集に応じたのはレ ナードとリリアンのバーバー夫妻だった。ふとしたきっかけから、フランシスは自分よりも年下のリリアンとの交流を深めていくのだが……。心理の綾を丹念に描いて読む者を陶酔させる、ウォーターズの最新傑作ミステリ。


(2016年1月7日)




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