今月の本の話題

2015.12.07

『夜の写本師』を超える、衝撃と感動。乾石智子の新たな世界。 日本ファンタジーの金字塔。『滅びの鐘』乾石智子[2015年12月]

  リュウダンの楽曲を奏でよ
  四百三十九弦(エアー)琴の詠唱を聴け
  わが希望、試練の中にありて
  われらが希望、嵐のさなかにありて
  砂粒ほどの 光なれど

  おお、秩序の鐘、約定の鐘
  瓦礫の上に建つ都の
  偽りの言葉にて造られし 真実の鐘よ
  とき 至れば 砕かるるべし
  憤怒の炎に身を焼きて
  悲痛の雷電にからめとられたる
  石の子の一撃によりて

  されば王都 再び瓦礫となりぬべし
  翠の石散り広がり
  火風吹き 血の川流れ 苦痛のうめきやまず
  闇の獣吠え 漆黒石(ヴァイロン)の〈歌い手〉歌い
  暗黒の矢の飛びて
  虚偽の王国 滅ぼさるべし

 北国カーランディア。建国以来、土着の民で魔法の才をもつカーランド人と、征服民であるアアランド人が危うい均衡のうえに、なんとか平穏に暮らしてきた。だが、現王のカーランド人大虐殺により、見せかけの平和は消え去った。怒りに燃える大魔法使いが、平和の象徴であった鐘を打ち砕いたのだ。
 鐘は四百九十六個の破片となり、風に乗り四方八方へ飛び散った。その二つは世継ぎの王子イリアンの両足に入り、北の町に住むカーランド人の少年タゼーレンの胸にも……。
 そして鐘によって封じられていた闇の歌い手タイダーと魔物カイドロスも解き放たれた。闇を封じ、カーランディア王国を滅びの運命から救うことができるのは古の〈魔が歌〉のみ。

 著者が長年温めてきたテーマを圧倒的なスケールと筆致で描いた、日本ファンタジーの金字塔。

(2015年12月7日)



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