みなさまこんにちは。ラムネとフェレットをこよなく愛する翻訳ミステリ班のSです。今回は、12月刊行の新刊『深い森の灯台』(マイクル・コリータ著/青木悦子訳)について、刊行の一ヶ月前なんですが、一足先にご紹介しようと思います。この本、もうほんとおもしろいので、わたしの溢れるパッションにおつきあいいただけるとうれしいです!

あらすじはこんな感じです。

――アメリカの僻地にあるブレード・リッジ。この丘陵には、海から遠く離れた森の中に灯台があった。12月のある日、灯台の建築主であるワイアットが死んだ。死の直前の彼から謎のメッセージを受けた保安官代理のキンブルは、真相を探るうちに過去の事件との恐るべき繋がりと新たな疑問に気づいてしまう。なぜワイアットは灯台を建て、 20年近く、昼間ですらライトをつけていたのか。そして死に憑かれたこの森に“青い松明”が現れるとき、さらなる惨劇が……。


謎が謎を呼ぶってこういうことかな、というくらいミステリアスな作品です。まず舞台設定がすごい。深い深い森の中に、「灯台」が建っているというとてつもない違和感と恐怖。そしてその不可思議な場所で、灯台の建築主が死にました。しかも彼は、死の直前にふたりの人物に謎のメッセージを遺します。

「自殺した人間が本当は死にたくなかったとしたらどうだ」「自殺の理由も、殺人を調べるときと同じように追求してくれるのか?」「俺がいなくなっても、ここのライトをつけておくことが大事なんだ」

もうこの問いかけだけで事件の背後には何かある!と、びびっとくると思います。そして次々に明らかになる、建築主ワイアットの奇行。彼はなぜ20年近く、昼間ですら灯台のライトを灯し続けていたのか? なぜ彼は数十人の男女を被写体とする写真を集め、何を探っていたのか? 同時に、町では不穏な出来事が次々に起こり始めます。キンブルの部下は交通事故を起こしてしまい、いるはずのない男を見たという奇妙な証言をします。灯台の隣にあるネコ科獣救助センターの大型ネコ科獣たちは、夜が来ると興奮し攻撃的になります。そして森に現れる“青い松明”……。

本書の翻訳原稿はとにかく一気読みでした! すばらしい緊迫感、とてつもないミステリアスさ。冗長な場面が一切なく、心地良い疾走感を味わうことができる物語です。読めば読むほど深まる謎に翻弄されていくのも楽しい。ひとことで言うと、まさにこれ。

「さくさく読めちゃうスティーヴン・キングみたい!」

スティーヴン・キング御大やピーター・ストラウブさんなど、「ホラー! スリラー! サスペンス!」みたいな作品がお好きな方にはぜひぜひ読んでもらいたいです。「いやでも、わたし怖いのはちょっと……」という方もご安心ください。魅力的な登場人物や幻想的でうつくしい場面もたっぷり。特に黒豹や虎などネコ科獣好きの方は必読です。たまには普段読まない傾向のものを手にとってみるのも良いのでは。きっと今までにない大満足の読書タイムを味わえると思います。

本書は2015年12月刊行です。謎と恐怖に満ちた超大作ですので、乞う御期待!!


(2015年11月5日)




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