ケルンで起きた連続猟奇殺人事件。腕、脚、首などが切り取られ、内臓を抜き取られた遺体が次々に発見されたのだ。
 一連の事件は〈解体屋〉事件と名づけられ、捜査が進んでいたが、そこに招集されたのが事件分析官マーティン・アーベルとハンナ・クリスト。
 アーベルは変わり者で知られていて、その手法は独特だった。
「しばらく遺体とふたりきりにしてくれ」そう言って遺体にひとりで向き合い、遺体の声を聞き、それからすべてを分析するのだ。
 クリストは熱意のある若き女性分析官。変人だがきわめて優秀な事件分析官アーベルからすべてを学び取ろうという意欲に燃えてやって来たが、その変人ぶりに振り回される。『法医昆虫学』の著書のある昆虫学者の協力を得て、死亡時期を割り出し、傷口、骨の切断面を精査し、犯人の行動をなぞる彼の奇矯な振舞いと、どこか陰のある様子にクリストは次第に惹かれ始める。そのクリスト自身もどこかに暗いものをひきずっていて……。

 450ページを超えるボリュームを感じさせない、スピーディな展開と、濃密なストーリーを、是非お楽しみ(?)ください。
 ドイツミステリ界の層の厚さをおわかりいただけるはずです。

(2015年10月5日)




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