フランスの詩人、アルチュール・ランボーの『母音』という詩をご存じですか? これは「A(アー)は黒、E(ウー)は白、I(イー)は赤、U(ユー)は緑、O(オー)は青…」というように、母音を色に置き換え、そのイメージを言葉で表現した作品です。
この斬新な作品から着想を得た本格ミステリが、本書です。主人公は、ほとんどの色を識別できない色覚障害の少年・菊巳。ある日彼は偶然、色覚障害者のサイト〈ランボー・クラブ〉に辿り着きます。そのトップページに掲げられた『母音』をなぜか原語で読める自分に戸惑う菊巳でしたが、同時にあることを思い出します。
遠い昔に見た覚えがある、誰かが流した血の、真っ赤な色。幼い頃は、かつて色が見えていたのではないか?
あるはずのない記憶に不安を抱きながらも、『母音』に魅了される菊巳。ところが、後日何者かがその詩を改変し、詩になぞらえた殺人事件が起きてしまい……。
菊巳は何者なのか? という彼の失われた過去を軸に、不可思議な見立て殺人、女探偵に依頼された失踪事件、ある人物が受ける脅迫といった、多彩な謎が本書に盛り込まれています。
二転三転する事件の末に、孤独な少年が辿り着いた真実とは? 読み応え抜群の本格ミステリを、どうぞお楽しみください。
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色覚障害者のサイト〈ランボー・クラブ〉。仲間を探す中学生の菊巳が偶然見つけたそのサイトに掲げられた、ランボーの詩。なぜか解読できた原語の詩を読んだ時、彼にあるはずのない、鮮やかな血の色を見た記憶が蘇った。
そして後日、何者かによってその詩が書き換えられ、詩になぞらえた死体が発見された! 色覚障害の少年をめぐる事件の驚くべき真相とは? 鮎川哲也賞受賞作家が贈る、傑作本格ミステリ!(単行本版タイトル『ランボー・クラブ』改題・文庫化)
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(2015年10月5日)
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