今月の本の話題

2015.10.05

ゲラ版読者モニターさんによる熱い感想コメントをご紹介! 全米図書館協会アレックス賞受賞作 ジョン・コナリー『失われたものたちの本』[2015年10月]


先日は『失われたものたちの本』ゲラ版読者モニターへ、たくさんのご応募ありがとうございました! 読者モニターに選ばれた方からたくさんの“熱い”コメントをいただきまして、担当編集者であるわたくしSはめちゃくちゃ感激しました。今回は読者モニターさんのコメントをご紹介するとともに、翻訳者の田内志文さんが選ばれた〈ベスト・コメント〉も発表しちゃいます!!

本のあらすじや内容紹介は詳細ページをご覧ください。(http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488010492


*読者モニターさんの声*

Y.Mさん

母親を亡くした孤独な主人公、デイヴィッドに本たちが囁きかけてくるという冒頭から引き込まれた。(……)物語で始まり、物語で幕を下ろす、物語を読んで育った人のための本。物語を愛する全ての人に読んでもらいたい一冊である。

A.Wさん

ミステリーの要素もあり、物語の王国の王様の正体や、失われたものたちの本の真実は、驚愕でした!!
緻密な伏線があり、少しづつ少しづつ真実に近づき、敵を欺いて 真実を手に入れるデイヴィッド。
私には到底真似できない、聡明さと勇気を持つ事ができた彼を誇りにすら思ってしまいました。

ユキシゲゼンニさん

普段は主を無視して好き勝手にささやきを交わしている我が家の本たちが、「失われたものたちの本」を読んでいる間は割と静かにしていてくれたのは、ぼくがこの物語を楽しんでいるのを喜んでいてくれたからに違いない。

齋藤英恵さん

ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』に匹敵する、読み継がれるべきまごうことなき傑作。

しゃおさん

これはノスタルジックな想いにさせると共に、理不尽な残酷さとその対極にあるような美しさといった、この世界というものの真実に気付かせてくれる寓話だ。

D.Oさん

母親を亡した悲しみ、父親に理解されない悲しみ、新たな家庭に馴染めない悲しみ、とこれまで読んだ物語の中で一番「悲しみ」という感情を持つ主人公デイヴィッドがこれらの悲しみを克服し、大人へと成長する過程とその後が描かれた『失われたものたちの本』。 この作品の魅力は「一切ごまかすことなく、起こる出来事をありのままに描写していること」だと思います。

隈部雅則さん

少年デイヴィッドの、繊細な心が紡がれた物語。
この本から、まさしく囁きが聞こえてくるような気がした。
その囁きに耳を傾けたとき、定番ではない、新しい世界の物語の扉が開く。
かつて幼い頃に初めて本を手に取ったときの感動を、本棚いっぱいに詰まっている夢の世界への憧憬を、大人になった今、甦らせてくれる、この作品との出会いに感謝したい。


……というわけで、読者モニターさんからの熱いコメントの一部をお届けしました。本当はみなさんのご感想を全部ご紹介したいくらいなんですが、コメント全部の文字数がなんと1万5000字! になってしまいましたので、泣く泣く抜粋させていただきました。みなさん力の入った文章ばかりで、どこを抜粋するか選ぶのが大変でした。ありがとうございました!

そして、いよいよ田内志文さんが選ばれた〈ベスト・コメント〉の発表です! こちらは全文掲載です!

*田内志文さんが選ばれた〈ベスト・コメント〉*

大谷瑠璃子さん

最近ちょいちょい映画にもなっているような、いわゆる喪失の痛みを乗り越えて成長する少年の物語、といったところかな?と思いながら読み始めたのですが、すぐに主人公デイヴィッドの心の動きにぴったりと寄り添っている自分に気づきました。デイヴィッドと共に異世界を旅するにつれて呼び起こされる、人生のさまざまな段階における生の感情、痛みゆえの怒りや哀しみの記憶に、鈍痛のような懐かしさと切なさを覚え、「ああこれはかつて子供だったすべての大人のための物語なんだ」と感じてからは、我がことのような切実さに駆り立てられるようにして、最後まで立ち止まることなく読みつづけました。
「みんなわしの子供だよ。失われし者も、見つかりし者も、生ける者も、儚くなった者も。ひとり残らずそれぞれの意味で、わしの子供たちなんだよ」という木こりの言葉に思わず涙し、それから最後まで自然と涙が流れっぱなしでした。最後の一行を読み終えたとき、正直これほど壮大で深い物語だったのかと感動せずにいられませんでした。長い長い旅を終え、しばらくこの余韻に浸って放心していたい。そんな読後感で胸がいっぱいでした。
個人的には、これまで読んだファンタジー小説の中でもいちばん胸を打たれた作品です。というより、「ファンタジー」と「現実」、「物語」と「人生」がまさに切り離せない蔦のように絡み合って、もはやそれぞれを区別することに大して意味はないと思えるくらい、物語の偉大な力というものを感じる小説でした。

○田内志文さんの選出理由

僕にとってこの本が持つ大きな魅力は、プロットだけを見るとファンタジー小説なのだけれど、いざ読んでみると、やすやすとはそう分類できない気持ちになってくるところです。プロットだけを見ると王道ともいえる異世界冒険譚であり、少年の成長物語のように感じられるのですが、いざページを開いて見ると、それが違う。欠点のないキャラクターなどほとんど登場しませんし、旅を続けるデイヴィッドも嫉妬や憎悪に駆られ、いわゆる少年ヒーロー的な気持ち良さはありません。どのキャラクターを見ても、どの展開を読み進めても、延々とスカッとしない感じと言いますか。この「少年が冒険を経て成長していくファンタジー作品」というイメージから大きくズレているはずなのに、「しかし説明するなら確かにそのとおり」というところがものすごく魅力的だと思うのです。
そうして、既存のジャンルや先入観を裏切っているような気持ち良さが、この物語にはあるのだと僕は感じました。当然その「裏切り」を感じる読者も多いのではないかと推測するのですが、それがもっとも分かりやすく書かれていたことから、大谷さんの寄せてくださったコメントを選出させていただきました。
さて、よくファンタジー小説と言いますが、ファンタジーとは本当に幻想世界のことなのでしょうか? 実は、現実とファンタジーの境界など、実に曖昧なものなのではないかと思います。個人個人の胸の内にしか存在しないものを「ファンタジー」と見なすのか、それともそこに在る「現実」として見なすのかにより、すべてはファンタジーにも現実にもなり得るのではないでしょうか。境界線など、本当はないのかもしれないし、僕たちは思いのほか頻繁にその境界線をまたいでいるのかもしれません。この『失われたものたちの本』はそうした「現実・非現実」の境界線を気持ちよく、まるではなから無いもののように飛び越してしまっているようなところがあると、僕は感じました。そこに対するすれすれのアプローチが、まさに絶妙なのです。
大谷さんと同じように、僕もこの本を読み終えてしばらくは、放心状態のようになりました。これは、一般的にファンタジーに分類されるであろうこの作品が、現実の力を持ち、現実を生きる僕たちに作用したからに他なりません。


見事〈ベスト・コメント〉に選ばれた大谷さんには、田内さんのサイン入り単行本をお送りさせていただきました。ほんとうに、みなさん素晴らしいコメントをありがとうございました!! そして未読の方は、9月30日発売の本書をぜひ手に取っていただけますとうれしいです。
(東京創元社S)

(2015年10月5日)




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