“ジェヴォーダンの獣”事件というのをご存じでしょうか?
18世紀フランスで実際にあった事件で、1764年から1767年にフランスのジェヴォーダン地方で、女性や子どもが謎の動物に襲われる事件が頻発。謎の動物の正体については、狼、ハイエナ、狼と犬の交雑種、人狼(!)、人間による陰謀など諸説あり、未だに真相は闇の中です。
 それだけに、様々な人々の想像力を刺激するらしく、小説や映画の素材にもなっています。2001年に映画は『ジェヴォーダンの獣』が日本でも公開されていますし、2013年にはNHKが『幻解! 超常ファイル ダークサイド・ミステリー』という番組で、この事件を取り上げています。映画のほうはDVDにもなっています。

 その実際に起こった事件を、ドイツのニーナ・ブラジョーンが独自の解釈で物語にしたのがこの作品。

 首のない死体。野獣に噛みさかれたような傷痕。ジュヴォーダン地方では、謎の人死にが続いていた。犠牲者は既に三十人を超え、襲われたのはほとんどが女子どもばかり。
 狼か未知の獣の仕業なのか。獣の正体に興味を抱いた博物学者の卵トマは、ヴェルサイユから派遣された狩人に無理矢理同行する。襲撃のあった現場付近の城で、トマは“野獣”に襲われて生き延びたという美しい少女に出会う。だが、トマが心惹かれたその少女イザベルは領主の妹で、襲われたときの記憶を失っていた……。
 十八世紀フランスを舞台に実在の事件を題材にした謎あり、ロマンスありの、ゴシックミステリの決定版。
 読み応えのある傑作です! 是非秋の夜長の友にどうぞ。

(2015年10月5日)




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