歴史ミステリの金字塔『剣と薔薇の夏』(日本推理作家協会賞受賞作)、トリッキーな仕掛けが炸裂する『うそつき』など、数々の秀逸なミステリを描く戸松淳矩さん。新作『終戦のマグノリア』は、前2作の面白さを融合した傑作長編ミステリです!

 現代の日本、鎌倉にある資産家・竹宮家から謎の文書『木蓮文書(マグノリア・ドキュメント)』が発見されたところから、物語は始まります。竹宮家の投手の娘・菜之花に依頼され、従兄弟の恭一が解読を進めると、文書には昭和19年、海軍和平派と大学教授らが企てた終戦工作をめぐる内容だと分かります。ところが、文書の解読と前後して、竹宮家の周辺では不審な出来事が相次ぎ……。

 本書は竹宮家の者が『木蓮文書』の謎を追う現代パートと、『木蓮文書』内で描かれる、人々が終戦工作に奔走する過去パートが、交互に描かれています。
 現代パートでは、『木蓮文書』に秘められた謎が、解読を進めるうちに徐々に判明していく面白さがあります。それと並行して、竹宮家の周囲で次々と起こる不審な出来事が描かれるサスペンス要素もあります。
 一方の過去パートでは、海軍和平派と大学教授らによる終戦工作が詳細に記されていますが、これは実際にあった、帝国海軍少将・高木惣吉と西田幾多郎をはじめとする京都学派による終戦工作をモデルにしています。彼らのやり取りは読み応えがあり、当時の厳しい状況でも、懸命に戦争を終わらせようとしていた人々の想いに胸が打たれます。

『木蓮文書』は、何故このタイミングで発見されたのか? 過去パートと現代パートが繋がり、文書に隠された70年に及ぶ秘密が明かされた時、世界の未来を大きく左右する真実が明かされます!

 終戦70年目にあたる2015年の夏、お楽しみいただければ幸いです。

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 鎌倉の豪邸に住む資産家・竹宮家の書庫から発見された、『木蓮文書(マグノリア・ドキュメント)』。当主の娘である菜々花に依頼され、従兄の恭一が文書を読み解いていくと、第2次世界大戦中の昭和19年、海軍和平派と大学教授らが企てた終戦工作をめぐる内容だと判明する。
 しかし、文書の解読と前後して、竹宮家の周辺では不審な出来事が相次ぐ。全ては『木蓮文書』を狙ったものなのか? やがて、事態は思いがけない方向へ……。文書に隠された秘密とは?

 日本推理作家協会賞受賞作家による、圧巻の長編ミステリ!

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(2015年8月5日)




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