今月の本の話題

2015.07.06

現代英国本格のさらなる高みへ――シェトランドの新たな物語 アン・クリーヴス『水の葬送』[2015年7月]


現代英国本格のさらなる高みへ――
シェトランドにもたらされる新たな謎と物語
ジミー・ペレス警部シリーズ最新作登場



英国推理作家協会(CWA)最優秀長編賞を受賞した傑作『大鴉の啼く冬』を第一作とし、以下『白夜に惑う夏』『野兎を悼む春』『青雷の光る秋』の四作から構成される〈シェトランド四重奏〉。現代における本格ミステリとして、一作ごとに高いクオリティを維持したまま、四部作としての完結を見ましたが、主人公ジミー・ペレス警部の物語は終わっていませんでした。
英国最北端の島々シェトランドを舞台とする、ジミー・ペレス警部シリーズの第5作として2013年に発表されたのが、本書『水の葬送』です。

本書で語られるのは『青雷の光る秋』からおよそ半年後、シェトランドにふたたびの春が訪れた頃のできごとです。地方検察官ローナが、外海へ出ようとしている鎧張りの船(ヨール:伝統的な工法で作られた競漕用の小船)を岸に戻そうとして、船中に若い男性の死体を発見する……という印象的な発端から事件は始まります。そして死因が他殺であること、被害者が地元出身のやり手新聞記者であることが判明し、彼が帰省して島のエネルギー産業問題を取材していたらしきことが知れるにつれ、物語はこれまでの〈四重奏〉とは異なる彩りを帯びはじめるのでした。

『青雷』までお読みいただいたかたなら、主人公ペレス警部の去就には大いに関心があることでしょう。本書でのペレス警部は以前と変わってしまった点、変わらぬ点をともに持ち合わせながら、新たな事件に取り組むこととなります。

そう、本書は〈ジミー・ペレス警部の物語〉としては地続きながら、〈シェトランド四重奏〉とは異なる新たなかたちで綴られる作品なのです。もちろん、ミステリとしてのできばえは保証しますのでご安心ください。

アン・クリーヴス『水の葬送』は7月21日刊行予定です。


シェトランド島の地方検察官ローナは、小船にのせられ外海へ出ようとしていた死体の発見者となる。被害者は地元出身の若い新聞記者だった。本土から派遣された女性警部がサンディ刑事たちと進める捜査に、病気休暇中のペレス警部も参加し、島特有の人間関係とエネルギー産業問題が絡む難事件に挑む。〈シェトランド四重奏〉を経て著者が到達した、現代英国ミステリの新たな高み。

(2015年7月6日)




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